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略奪可能な食品庫

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写真は奄美地方から移築して神奈川に再現された「倉」。
すごいんですよね、植生なんかをみると
わたしのような北海道から見に行く人間からすると
熱帯の、ポリネシアくらいな感じを持つ。
夏期は実際、神奈川ってそれくらいな気候地域ですよね。
聞いてみたら、沖縄からの移住者が多いとも言われています。
気候風土的に太平洋型の海洋性気候が共通する部分なのでしょうか?
で、この建物、用途としては食品を保存する倉なんですね。
「高倉」というネーミングはそのままでもある。
こういう熱帯の気候地域では、
なにより食品を乾燥状態で保存させるというのが大問題。
縄文の時代にむしろ北日本・東日本の側が生活しやすい地域だった
とされている理由には、食物保存の方法が
「寒い冬」という天然の「保冷装置」が得られたという理由が大きいと
聞くことがあります。
秋に大量に獲得できる食料が、雪という冷蔵庫で長期保存できたと言うことなんですね。
一方で、南方型の気候地域では、
冬もものが腐りやすく、長期保存に適していなかったということ。
そういう現実をどのように克服するか、というテーマに
この「高倉」は応えている生活装置なんですね。
以前に「吉野ヶ里遺跡」は2度ほど見に行っていまして、
コメ生産社会と、このような長期保存装置は一体として進化してきたのだと
認識させられましたが、その建築的仕様はより南方の
こうした地域からもたらされたものなのでしょうね。
逆に言うと、こうした高倉が遠望されれば、
その地域には「略奪可能な」長期保存食が貯えられている、という証拠でもある。
その「富」を狙って他地域の支配者が略奪を試みたのでしょう。
きわめてナマな戦争の、戦いの基本的な動機なんだと思います。
隣の芝生はきれいに見える、みたいなもので、
このような高倉建築はわかりやすい動機を養ったのでしょうか。
そんなDNAに刷り込まれた感覚の部分、きっとわたしたちにも残されているのではないかと
想像してしまいますね。
建物としてみれば、
やはり通風に配慮していることが明白。
湿潤な気候の中では、このように床下空間を全開放させて、
通気させるのがもっとも理にかなっています。
こういう場合で一番心配されるのはネズミの食害でしょうが、
ここでは4本の柱上部に「ネズミ返し」の工夫が施されていました。
「食」の安定確保がなによりも最優先されてきた歴史を
まざまざと視覚的にも体験させてくれる建築だと思います。
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