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【紀州のわが家系探求、やや座礁に】

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本日は東北に移動。久しぶりに北東北なのでフェリーで移動。
2〜3年前までは、体力的にも全然大丈夫ということで、
とくに震災直後など頑張っておりましたが、
最近はややわたし自身はやや足が遠のいております。
年齢も加わってくきたので、どれくらい駆け回れるか、であります。

なんですが、それとは別に個人的なルーツ探検、
先日の紀州・和歌山探訪の旅の成果として、
大阪府立図書館さんのWEBレファレンスサービスを利用して、
なんらかの情報にたどり着けないものかと期待していたのですが、
その返答がきまして、どうも芳しくない状況であります。
慶長年中、という今から400年以前のことですから、
手掛かりはなかなかないようであります。
どうもわが家のご先祖様は、紀州・桑山重晴という
豊臣秀長の代官として紀州和歌山に城を構えた家中に
「仕官」していたようなのですが、
この「城代」としての、事実上の「大名家」という存在では
正史としての文書記録などはなかなかないようです。
一部要旨抜粋は以下のよう。
『和歌山県史:中世史料 2』(和歌山県史編さん委員会/編 )
p.441-444に桑山重晴宛ての書簡が収められている
「護念寺文書」が収録されています。
巻末の「護念寺文書」についての解説には
「桑山氏の在城時代(1585~1600)に松屋町に移し、
城の鬼門の守護となし、その名も護念寺と改めた。・・・・
当寺は豊臣氏の城代桑山法印重晴(号果報院)と縁故が深く、
桑山氏関係の文書を所蔵するに至ったものであろう。
11通の書状のうち、前後を欠いたものもあるが、
すべて桑山法印(重晴)に宛てたものと思われ、差出人は
羽柴秀長・小西長政・大谷吉継・前田利家等の武将のほか、
天満年寄中というものもある。残存量の少ない桑山時代の史料として
貴重なものである」(p.1078)と書かれています。
なお、この資料には家臣に関する記述はありません。

というような状況。
この桑山家は、関ヶ原において両端に侍する立場を取っていたので、
たぶん都合の悪い側(西軍側)の立場で行動した家臣たちは
そのため戦後、家のために身を引かざるを得なかったのではと推測される。
そういうこともあって、記録手掛かりもないのでしょう。
う〜〜む、ルーツ探し、完全に暗礁であります(泣)。
まぁ趣味の世界ですので、気長に突破口を探したいと思います(笑)。
本日は、ややテーマズレでした。あしたから本題に戻ります。

【中世都市・堺の街区計画】

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日本史の中で、中世都市・堺という街は異彩を放っている。
写真は境市博物館で展示されている江戸期の街並み図。
もちろん撮影OKというものなのですが、
わたしが探している信長に屈服する以前の独立中世都市・堺とは違う。
学芸員の方に聞いたら、その時期の街割り図はやはり現存していないそうです。
堺というのは大航海時代の世界と日本社会との接点。
どのような勢力からも独立を貫き、鉄砲の販売を主軸に
海外産物の交易と国内流通の利権を一手に握って、
自衛組織を傭兵などによって確立していたとされている。
その時代の奈良で、堺からもたらされた輸入の「ファッション」が
若者たちの心を捉えて、大ブームになったというような記録もあるそうです。
たぶん、わたしたちの社会の中で長く生起した海外文化への憧れが
この時代になって、完全にそれが堺の「町衆」に独占的利権になった、
そういうことを伝えてくれているのだろうと思います。
堺という地名は、そういう自由とか開明性とかの象徴のようなものとして
感受性の強かった信長、秀吉などの世代に大きな影響を与えたに違いない。
そういえば家康ですら、信長の横死直前に堺見物に行っていた。
戦後の横浜、神戸などが占めていた文化的位置の嚆矢として
この堺の街は日本史の中に存在し続けていると思う。
この街においては、ほぼ完全な自治が達成されていて、
ほかの日本社会でどんなに敵対的関係にあっても、
この街内部では、その敵対関係による騒乱行為が禁じられていた。
商人たちによる独立自治が日本国内で完全に成立していた。
街区間には木戸が設置されていて、
夜間にはそれが完全に閉じられて、治安も維持されていたとされる。
たぶん、その後の江戸の街割り、街区形成などに
その到達した都市計画思想は反映されてはいるのだろうと想像しています。

かれら内部での行政的自治機構がどんなものであったのか、
そして街割り、都市計画、住宅のかたちはどんなものであったのか、
この絵図面に魅入りながら、想像力を働かせていた次第。
いまも時空を超えて「取材」してみたいと強く思っております。

【ZEHテーマで北総研・鈴木大隆氏と対話】

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きのうは北総研・本部長の鈴木大隆氏を囲んでゼロエネハウス(ZEH)について
地域工務店トップのみなさんとの討論会が当社にて行われました。
年末発行の北海道の地域工務店グループ・アース21の本
「北海道の家づくりの現場から」の特別企画です。
鈴木さんは国交省の政策参与を務められるなど、北海道の立場に立って
国の政策についても関与されている存在。
わたしどもReplan誌でも毎号、エッセイを執筆いただいています。
鈴木さんはこのZEHについては、直接的な関与はないとされていましたが、
地域としての北海道、地域工務店としてZEHにどう対応すべきか、
その知見を伺いながら、多くの気付きを得られた対話になりました。

内容について詳しくは、12月に発行する本の中でまとめたいと思いますが、
ひとつの対話内容として、地域のサスティナビリティの探求という
非常に豊かな方向性も得られたことはお伝えしたいと思います。
これまでは補助金付けでの太陽光発電誘導の側面が強く、
そのインセンティブばかりが強調されている感のZEHではありますが、
まず鈴木さんから、北総研の緊急的活動として今回台風で大きく被災した
南富良野町の災害復興計画などに立ち向かわれていることを聞きました。
人口減少社会の「地方の課題先進地域」である北海道で
その由来が全地球的規模での気候変動であることが容易にわかる、
それこそ50年に一度くらいの深刻な被害の状況、
突発的災害の多発という待ったなしの現状にどう対応すべきか。
大きくは環境産業創出という側面も持ったものとしてZEHを捉え直し、
「地域起こし・再生力」の方向性を持って対応すべきという論議になりました。
このような気候変動、安定期から変動期への激変という
地球環境変動はその根源に於いて同時にエネルギー問題だという認識。
変動期の激変を乗り切っていく、地域としてのサスティナビリティの探求、
世界共通で取り組んでいるZEHにはそのような意義があるでしょう。
そしてそのなかで災害は今後とも否応なく襲ってくる。
そこから地域が再生力をどう作っていけるのか、という根本的認識。
地域が生き延びていくためには、そのエネルギーについても
自立的な産業要素として考える視点が求められてくる。
太陽光発電の売電という手法ばかりではなく、
地域としての再生可能エネルギーの取り組みという考え方もあると思います。
ZEHはその理念として、環境産業を育てていく契機にもなりえる。
そういう考え方を持てば、地域コージェネによる共有エネルギー資産形成など、
志向性の幅は大きく広がっていく。
地域に責任を持つ作り手・工務店は、公共との連携でそうした地域活動の
大きな核心になれる可能性がある、そんな対話が成立したと思います。

多くの方からZEH反対の急先鋒と誤認されているわたしですが(笑)、
このような気付きを得られたこと、率直に申し述べたいと思います。
今後のエネルギー技術の進展に注目しながら、
地域が生き延びていくための手段としてのエネルギー・環境の視点を
今後どのように目的的に追求するか、考えどころだと思われます。

【里山住宅博・ヴァンガードハウス2これからの家】

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さて先日の神戸での住宅見学です。
関西訪問という機会はあまりないので、あちこち調べて駆け足行脚。
ということなので、残念ながらあまり事前情報チェックはできていませんでした(泣)。
そういうわたしにも、どうやらセンターハウスのような住宅に
新住協メンバー・ダイシンビルドさんが施工して建築家・堀部安嗣さんが
設計された住宅があるという、断片的な情報だけがあったという次第。
堀部安嗣さんはわたしは面識はないのですが、住宅作家として著名な存在。
その方が高断熱高気密の作り手と協同する建物ということで、
この機会に見学しようと考えていた次第です。
ヴァンガードハウスって、意訳すると前衛的な家ということになるのでしょうか。

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上の写真は現場で見せていただいた図面で、4間×4間の黄金パターン。
階段部分だけ出っ張っているけれど、コストパフォーマンスの高そうなプラン。
北側に里山の眺望が広がる立地条件そのまま、
居間から可能な限りの開口をそちらに開くというシンプルなプラン。
暖房は床下エアコンを装置。居間と土間的なダイニングの中間に
エアコンスペースが置かれ、基礎断熱の床下に送風する仕立て。
そこで暖気が貯えられ、窓面直下などに開けられたガラリから上昇させる。
南側ダイニングに土間が採用されているのは
南面の日射熱をダイレクトに取得しようという工夫だと思われます。
夏場の冷房は階段室壁面に付けられたエアコンで家中を冷房する仕様。
いまはセンターハウス機能も担っているので、
そのエアコンを格納させている間仕切り収納が受け付けテーブル代わり。
断熱的には基礎断熱がGW200mm、壁は4寸角部材使用のようでGW120mm、
天井GW200mm、土間下FPボード50mmという構成でした。
省エネ基準相当の「燃費」に対して半分の性能要件が実現されている。
1階の居間・ダイニングの大きな開口部には木製3重ガラス入りサッシ。
玄関内部の壁はラワン合板が使われていました。
案内の方に確認させていただいたのですが、この建物では基本的造作面材として
たくさん使われているとのこと。
ラワン合板って一般的には目に付くところには使わないと思いますが、
見た目でも美しい表情を見せてくれていて違和感はありません。

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上の写真は2階の様子。左側に主寝室、右側が個室ですが、
個室側はラワン合板で造作された間仕切り収納でセパレートされていて、
子供室2室という使われ方も想定しているようです。
またその個室群に対して4枚の引き戸もラワン合板で造作されていました。
このあたりの素材選択・造作はかなりチャレンジっぽいと思われました。
この廊下突き当たりに水回りが集中されていて、それも南北に通っている。
右側が南側で道路側で、洗濯・物干しスペースがまとめられていて、
左側にはお風呂とトイレ、洗面が配置されている。
回り階段の真ん中の衝立状の手すりは薄い壁厚なのに大変頑丈。
時間の関係であまり詳しくは聞き取れなかったのですが、全体として
寸法の感覚がしっかりしていて、コンパクトだけれど使いやすさが伝わってくる。
まことに「仕立ての良さ」が感じられる住宅だと思いました。

【エスカレートする金正恩・北朝鮮危機】

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本日は安全保障ネタであります、ご容赦を。

北朝鮮の核開発・ミサイル発射などの挑発行動が暴走している。
これまでの政策の完全な失敗をオバマ米大統領は痛感しているようだ。
アメリカにとっては中東情勢が最大の問題であることは今後とも違いないが、
中国に対して「覇権国家」としての一定の存在意義を認めて
東アジアにおいて6カ国協議でのイニシアティブを渡し続けてきて、
そのことを冷徹に自らの「台頭」に利用し続けてきた中国のふるまいにも
いまや歯止めが利かない状態になってきた。
核実験を年に2回も実施できる国際環境は、中国の海洋でのふるまいと
連動して生起していることは明らかであり国際的共通認識になってきている。
オバマ政権末期のこの状況は、アメリカの戦略の破綻を示している。
中国はアメリカの艦隊が南シナ海で活動を活発化させても
「既得権益」を決して手放そうとせず、
また中国自身のその「野望」のために北朝鮮の暴走を利用してきている。
この期に及んでも韓国のTHAAD配備を声高に非難している中国は
北朝鮮の暴走ぶりとどこが違うというのだろうか?
そして尖閣に対しての「漁民」の組織的動員、
民間人を装っての「侵略的活動」も、連動させてきているのは明白。

東南アジアでの国際会議中には日米会談は開かれなかったけれど、
オバマが帰国する大統領専用機搭乗中に、日米首脳による
「電話会談」が行われ、北朝鮮の挑発行動への対応が話し合われた。
直後に、東アジア安保問題についてのアメリカ側担当者が緊急来日するなど
やや緊張感をもった動きが生起してきている。
朝鮮系アメリカ人のこの担当者はテレビ直撃インタビューで
「あらゆる事柄について、率直に話し合う」と発言していた。
アメリカの対応としては、政治危機というよりも
軍事的対応も含めた危機認識に移ってきている可能性がある。
結局世界は、アメリカの世界戦略変動を大きな起動要因として動く。
そうであるとすると、東アジア世界のいまの緊張レベルは上がってきている。
日本の安全保障にとって、日本の排他的経済水域への北朝鮮の相次ぐ
ミサイル着弾や核実験という事態は、まさに相当に深刻な局面。
北朝鮮側のちょっとした現場的判断ミスでの偶発的事態も想定する必要もある。
このような事態が日本にとっての安保上の大きな懸念事態であることは
かなり明瞭になって来たし、国民としても身の安全を思う状況になってきた。
「専守防衛」原則である以上、ミサイル基地を先制的に叩く戦力は
日本は装備してきていないのだ。
もちろん日本として冷静に対応すべきだけれど、
日本国民の命を守る安全保障に弱腰で臨んでいい事態であるとは言えない。
国際平和のために、北朝鮮および中国に対して、
かれらが自制するように対応をして行かなければならないのは当然だろう。

【仕立てが良い、と多くの人が感じる家】

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世界の多くではデベロッパーが開発する「住宅地」に建てられた住宅を
現物として確認し、さらに買い主の立場に立つアドバイザーを使って交渉させて
ユーザーは、いわば「建て売り」住宅を購入するのが一般的。
その間で住宅は「資産」としての限りなく透明な価値判断を市場で見定められ
その上で流通するようになっている。
だから「資産価値」が維持された市場が形成されている。
それに対して日本の住宅は世界の「ふつう」とは違って、
戸建て注文住宅という形式が主流になっている。
ご存知のように、買った途端に大きくその価値が減衰することを
なかばは認識した上で、それでもユーザーは住宅を手に入れている。
そうではあるけれど、その「市場」のなかでの「価値」について、
ユーザーはやはり、相当に「厳しい目」を持って選別しているのだと思う。
そういった厳しい「価値尺度」ってなんだろう、ということは、
当然多くの関係者は、それこそ血まなこになって探し、競争している。

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そんな「競争」に、地域工務店たちが積極的に打って出たのが
神戸の郊外で展開している「里山住宅博」という企画。
新興住宅地でのデベロップメントは、地域工務店のような小資本では
なかなか自力では成しがたく、大手デベロッパーは安全策優先で
住宅企業としては販売力のある大手ハウスメーカーと組むのが一般的。
そういうなかで、地域工務店と地域の企画会社が取り組んでいる
ユニークな土地+住宅販売の試みであります。
以前から興味を持っていたので、先日の関西行きのときに、
時間を作って見学して来た次第です。
ただ、今現在でも20棟以上が建設されているようで
すべてを見学することは出来ないので、センターハウス的な住宅と、
「もうすでに売れた」という住宅の2軒に絞って見学しました。

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で、この住宅が「売れた」フクダロングライフさんのモデルハウス。
なぜこの家を見たかというと、この住宅地の作り手たちに
「いちばん面白そうな家は?」と聞いて、すぐに名前が出た家だったから。
で、それは一般ユーザーの評価としても「すぐに売れた」という結果に繋がった。
どうしてなんだろう、という興味ですね。
外観や配置計画などでは目を引くほどの個性は感じない。
でも、道路側に気になる屋根の掛かった部分が。
玄関に向かっていって振り返ると、どうもあいまいな中間領域。
屋根は掛かっているけれど、床は土間まんま。
聞いてみたら、近隣公共機関駅からの距離があって、駐輪スペースが不可欠で
それをきちんとデザインしてあったという次第。
目を引かせる外観印象よりも暮らし方の方を重視と思わされる。
一番最初の写真は、ダイニングの様子ですが、
食卓の窓辺に、腰掛けスペースが装置されていた。
いろいろな収納としても機能しているけれど、主用途は「まどろみ」。
こっちは南面していて、冬の日だまりの気持ちよさを楽しむ居場所とのこと。
聞いたら、住宅性能としても熱損失計数(Q値)で1.5と、北海道の基準並み。
暖房も、床下エアコンを装置するなど、細やかな気配りが感じられる。
というようなことから、段々と「仕立ての良さ」というフレーズが浮かんできた。
メインの居間からは北面して里山の眺望が得られる。
窓はもちろん3重ガラス入りの断熱樹脂サッシがしつらえられている。
その居間にはデッキが連続していて、ごらんのような眺望。
ユーザーの顔の見えない「建て売り」で、初対面のユーザーに、
「仕立ての良い暮らし」がまっすぐに伝わったのではと思った次第です。

【住宅の換気を考える シンポジウム in 札幌】

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さてきのうは、表題のようなシンポジウムが開かれました。
一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)から刊行された
「住宅用機械換気設備の計画と性能評価」と題された「ブックレット」を題材に
その内容まとめ、執筆作業に中心的に関わられた、
国交省国土技術政策総合研究所(国総研)・澤地孝男建築研究部長
高知工科大学准教授・田島昌樹先生をお迎えして、
これまでもこの換気のテーマで多くの実績を残されてきた
国立保健医療学院建築施設管理研究分野・総括研究員の林基哉先生と
北海道の立場から、福島明北海道科学大学教授とでのシンポジウムです。
林先生も、北大荒谷先生門下で福島先生とも同窓という経緯もあり、
北と南の研究者が換気というテーマで率直に語り合ったかたちでした。
反響は大きかったようで、日本全国からたくさんのみなさんが集まっていました。

換気のテーマは人体の健康維持の基本要件でありながら、
寒冷地においては同時に、暖房による熱が失われていく要素であり、
そのアンビバレンツな要素の「最適解」をさがすことでもある。
このことは澤地先生の発言でも、非常に重要なこととして語られていました。
換気はたくさんすればいいというものではなく、
まさに「最適」な領域で確保し、建物の長期的維持を可能にするものという
基本的な追求テーマだとされていました。
田島先生からも、機器のメンテナンス維持の具体的指摘もあって、
この換気が、住宅性能の縁の下の力持ち的な役割を果たしていることを
わかりやすく明示的に知らされたと思います。
さらに澤地先生からは、日本国家がCO2削減について
2013年基準年に対して2030年では40%削減を国際公約していること。
その半分20%相当は「電力の低炭素化」が基軸的に取り組まれ、
もう半分を住宅を主戦場にして削減する目標開示がありました。
たしかに換気もそういった大きなテーマの一環だと思います。
林先生は北海道独自の「換気」手法としての内外温度差換気、
パッシブ換気とその発展形である「ハイブリッド換気」に触れられていました。
これは寒冷地では効率が高いけれど温暖地では効率が得られにくいことに
配慮した、自然換気と機械換気の併用的なプラン。
注目に値する発表だと思われました。
北海道側の立場として福島さんからは、討論会の冒頭で、現状の0.5回の
換気回数指標について、事実上「気密」が省エネ基準から消えた現実の中で、
経験的には0.1回程度に相当する「コントロールできない換気」を
考慮に入れるべきとの重要な指摘もありました。
わかりやすいデータとして一番上の図のように、「気密測定」時には
建物の「隙間」を目張りして測定するのですが、目張りしない、
いわば建物が実際に利用されている状況では、気密化されていない建物ほど
この「コントロールできない換気」割合が高くなっているデータも示された。

その他、このような換気論議のベースとして
繰り返し1次エネルギー計算プログラムが論及されることについて
その「暖房設備」選択が事実上、「部分間歇暖房」しか選択できないことが
会場有志から鋭く指摘されていました。
このプログラムが持っている問題点は、寒冷地の「全館暖房」の常識とは
かなりの乖離があって、想像力が働きにくくなっている。
また、室内の空気を「回収」してきて汚染空気を「排気」させる1種換気の場合、
部分間歇暖房で部屋間で温湿度に違いがあるということでは
はたして問題無く制御環境を形成するのか、とか
そういった疑問、良く整理できない部分も印象として浮かび上がっていました。
やや専門的すぎて一般人的には明確な把握の難しい「換気」ですが、
家庭でのエネルギーコントロールには欠かせない領域なので、
今後とも、大いに知見の進展を期待したいと思いました。

【宗教建築に刷り込まれる地域文化認識】

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上の写真は札幌市の中心街にある日本キリスト教団札幌教会です。
明治時代に建てられた教会堂。1998年に国の登録有形文化財に登録された。
北海道庁の土木科に勤務し、教会の信者だった間山千代勝が設計を行い、
1904年に建てられたので築112年。建材には当時札幌市で採石された
札幌軟石が使用されており、教会堂の外壁に特徴がみられる。
当初は木造の建物だったが、火災に遭ったことから石造りが志向されたよう。
デザインについてはロマネスク様式を基調とする。加えて、アーチ型の開口部分、
頭頂部に設置された十字架、バラ窓など細部に特徴のある造りは、
ゴシック風のデザインを思わせる。〜というのが特徴です。
それぞれ好みはあるでしょうが、エトランゼのみなさんがこの建物を見ると
たぶん「北海道的」ということを感じられると思われます。
ただ、まだ時間経過は112年と言うことで、地元的評価もまだ定まっていないか。
たしかに「特徴的」ではあるけれど、愛着的かどうかは不明。

こういう建物に対して、同様に宗教的建築として、
たぶん創建当時「異国的」であったに相違ないと思われる奈良の春日大社。
下の写真です。高校時代の修学旅行では行ったように思うけど・・・。
奈良という人工的都は、当時の東アジアを中心とした世界感覚が
そのまま表されたに違いない極彩色的なコテコテぶり。
春日大社(かすがたいしゃ)は、中臣氏(のちの藤原氏)の氏神を祀るために
768年に創設された奈良県奈良市にある神社。
国宝であると同時に、世界遺産にも登録されている民族的資産。
こっちは1250年くらいの時間経過があるので、
日本的文化のひとつとして認識されていると言えるでしょう。

最近この2棟の建物を短期間に見ておりました。
いろいろな地域でマーケティング活動をしていると、
それぞれの地域の市場の「特徴」について考えざるを得ない。
奈良についてそんなことまで考えているわけではないけれど、
日本的時間感覚と北海道との違い、その北海道によって多く育まれた自らを
よく認識するためには、その相違についてわきまえるべきものがある。
こういった目に見えて実感できる「文化的相違」を、そこに住む人間として
肯定的に受け入れるか、否定的であるかは別にして
「地域性」の根源要素として、計量していくべき文化性であると思います。
北海道に暮らす人間として、道庁赤煉瓦庁舎やこうした建築などを見て育って、
「石造」に対してのある種の「ノスタルジー」はやはりどこかにはありますね。
そんなことをも日々、マーケティング的に考えざるを得ません。

【万人に好ましいプロトタイプデザイン】

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先日の新住協総会研修では、こういう研究テーマもありました。
きのうも鎌田紀彦先生と仙台の事務所で打ち合わせていたのですが、
いま先生にはReplan誌面で「Q1.0住宅デザイン論」を執筆いただいています。
全国から工務店が集まってくるので、
設計専業ではないかれらのつくる家が、最低限の見た目を保つことも
トータルの考え方では重要になってくる。
そうすると、基本となる「プロトタイプ」を持つ重要性は高まる。
そんな研究を誌面掲載を進めながら、ときどき論議しています。
総会では東京で設計事務所を営まれる鈴木さんの講演が行われました。

一軒一軒の住まい手のこだわりと住宅作家としての
「作品性」を重視する方向ではなく、
多くの人が「納得できて合理的」である、という要素がやはり王道。
提示した「図面」は、そういった特徴を押さえたプラン。
ほとんどが4間×4間というプランになります。
このプランは製造原価的にもきわめて合理的として知られている。
多くの建築関係者と話すとこれが基本だと知れます。
ただし、最後のプランだけはメーターモジュールなので、
寸法が若干、尺貫法に比べて一回り大きくなる。
この「若干」の違いが、体感的寸法感覚には非常に有益だと話されていた。
わたし自身も、多くの住宅を見てきていますが、
この「寸法」の感覚でセンシティブだなぁと感じられる住宅は
「納得感」が感じられると思っています。
ある住宅ではメインの眺望に向かうリビングのソファと
大きな眺望窓との「距離感」に深く納得させられた経験がある。
どうも日本人的には、規格寸法に対する感受性が強いのではないか。
というよりも、そういう寸法感覚が長い歴史で生き残ってきたのでは、
そんな気がしてきています。
多くの人間経験知が積層して、立って半畳寝て一畳みたいな、
合理的生活体感が、知らず知らずにわたしたちには備わっている。

しかし一方で、いま鎌田先生からは
その建物が置かれる「敷地条件」が日本の場合、
伝統的スタイルから大きく条件変更されてきているともされています。
ほぼ方形の敷地に対しての「納まり」を考えたとき、
しかもクルマの駐車スペースの合理性も合わせて考慮したとき、
この4間×4間というプランが適合的とは言い切れないと。
これまでに1年間以上、書いてきていただいていますが、
鎌田紀彦先生の連載記事「Q1.0住宅デザイン論」に
ぜひ多くのプロのみなさん、注目していただきたいと思います。

【ダクトエアコンによる全室冷暖房システム】

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9月2日の新住協札幌総会での研究発表で注目されていたのが、
東京での表題のシステム搭載の住宅事例。
これまでエアコン暖冷房については、基礎断熱の結果生成する「床下ピット」を
活用することで、1階に床暖房効果もあってコンクリート基礎の「蓄熱」効果も
利用するものが一般的に多く取り組まれてきたけれど、
ダイキン工業さんが「ダクト式エアコンの10畳用タイプ」という
手頃な小型のものを新発売したことを受けて、
それを階間の空間をピットとして活用して、上下階に暖冷房送風するというもの。
鎌田紀彦先生から、この実験的住宅のことはReplan連載記事打合せ時に、
お話を伺っていましたが、ダクト式エアコンは従来は高価な大型のビル用ばかり。
今回小さい能力のものが発売されたことで、実現に至ったもの。
ダイキン工業の「アクティビティビルトインS28RVL(10畳用)」というヤツ。

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通常の熱負荷計算にて熱負荷を計算すると、
暖房で2,854W(機器4,000W)
冷房で5,599W(機器2,800W)
となって、冷房の能力が足りないけれど、これまでの経験で
Q1.0住宅であれば足りると想定したと言うこと。
建物のプランとしては狭小地での3階建てですが、
密集都市部では一般的とも言える住宅。
ただ、このケースでは建築確認申請後に機器導入が決まったので、
天井裏のスペースが少なく、縦ダクトスペースも足りないため、
本来の計画からすると限界のある事例と言うことにはなっている。
またより効果的な、熱交換換気とエアコンの連動も不十分とのこと。
しかし今週7日には現地で鎌田先生と東大の前真之准教授が打ち合わせて
この住宅の熱環境実測調査も行われる予定になっている。
この発表直後から「すぐにでも導入したい」という
工務店関係者の会場からの声が発せられていました。
メーカー側もこうした鎌田先生主導の実験について大いに注目していて
実験への協力や機器改良について大変前向きと言うことなので、
有為なローコスト暖冷房システムに育っていく可能性があります。
カタログ価格で365,000円程度で全館空調が実現できれば、
日本の住宅にとって大きな革新を呼ぶことは間違いがないところ。
ただ、東京での事例と言うこともあって反響のあったみなさんは
比較的に温暖地のみなさんが多かった印象。
寒冷地域では暖房用の熱負荷との見合いでどうか、
また、寒冷地では従来同様、基礎断熱の床下ピット利用が
より優位な設備選択としてあるので、どうなるかというところ。
いずれにせよ、その稼働状況などの推移を注目したいと思います。