

円空
(えんくう、1632年〜1695年)は、江戸時代前期の修験僧(廻国僧)・仏師・歌人。
各地に「円空仏」と呼ばれる独特の作風を持った木彫り仏像を残したことで知られる。
円空は一説に生涯に約12万体の仏像を彫ったと推定され、現在までに
約5,300体以上の像が発見されている。円空仏は全国に所在し、北は北海道
南は三重県、奈良県までおよぶ。多くは寺社、個人所蔵がほとんどである。
その中でも岐阜県、愛知県をはじめとする各地には、円空の作品と伝えられる
木彫りの仏像が数多く残されている。北海道、東北に残るものは初期像が多く、
多作だが作品のひとつひとつがそれぞれの個性をもっている。
円空は、北海道でも広尾町・伊達市・寿都町の円空仏に記される「寛文六年」の
年号などから1666年35歳の時、北海道に渡って仏像を残したとされています。
北海道の円空仏は、観音坐像を中心に40数体が確認され、慈悲に満ちあふれ
微笑みをたたえるその表情から人々の心を和ませ信仰に導いたといわれています。〜
・・・というような人物ですが、大体人間加齢してくると円空に惹かれる。
わたしもまったくご多分に漏れません。
各地で円空仏を見てきたり、あるいは国立博物館の展示などで
たくさん見ておりますが、写真はわたしの撮影した有珠善光寺の「神棚」。
こちらの神棚はごくなにげに撮影したのですが、
善光寺というお寺なのに、こんなふうに神棚があって、
真ん中には般若の面が鎮座し、金ピカの仏像あり神鏡ありと豪華絢爛(笑)。
なぜ鬼の面が中央に鎮座しているのか、まことにフシギ。
これは「神棚」ではなく、神仏、魔界大集合というシルシなのかもしれない。
まことにキッチュな光景で、日本でしかあり得ない多神教の世界であります。
後述のような自然災害頻発で、宗派の違いを超え衆生救済に立ち上がったか。
江戸期の「神仏習合」のさまをまざまざと見せつけられる思い。
で、この左右に円空仏とおぼしき2体が鎮座されています。
左側の仏像の右隣の座像もそれっぽい。
円空が訪れたころの北海道・有珠は、1640年駒ヶ岳噴火津波、
1663年有珠山噴火など自然災害が頻発の頃とされている。
あるいは自ら志願して蝦夷ヶ島に渡り、自然災害に苦しむ人を助けたいという
かれとしての祈りをこめたのかもしれません。
コロナという現代の阿鼻叫喚のなかで、円空さんの仏たちの表情に
なにかつたわってくるモノがあるのではと、写真整理して見ました。
Posted on 12月 6th, 2020 by 三木 奎吾
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さてトラブル続きの2020年でありますが、もう少し混乱が続くのか(笑)。
わたしどもの会社では数カ所の駐車場賃貸契約をしております。
で、随時、契約・解約は日常茶飯で起こってくる。
ごく当たり前の日常業務であります。今回は直接わたしが関わった物件。
ということで12月3日朝に「解約しますから」と電話で不動産仲介屋さんに連絡。
そうしたら「追ってすぐに解約担当からメールを送ります」という答え。
「了解しました、即対応をよろしく」と返答し待つことにした。
で、そのあとは各種業務に没頭して忘れていた。
最近は対面しての話合いよりもWEBベースの対応が多くなってきた。
まぁ非対面で要件が済むので、便利になってきたことは間違いない。
とくにコロナ以降、顕著にデジタル化が進んでいると思います。
ところが、このメール丸1日経っても来ない。
解約に関する申し出なので、期日が遅れると直接利害がからむ。
たくさんの処理案件があるのだしこんな些事はさっさと片付けたい。
仕方なく、翌日4日再度こちらから電話連絡した。
「あのう、メールが来ないのですが、解約申し出は受理されているのですか?」
という当方の危惧をお伝えした。
電話対応担当としては、「それは申し訳ありません」ということでした。
で、再度別人の「解約担当」に至急連絡させますという返答だった。
数時間後、メールがようやく到着。文面に遅延対応へのお詫びはない。
あとでわかったけれど、どうも業務の定型文書をクリックして送信している様子。
<さらに本筋からズレるけれど、発信者名が女性担当者の個人名でのメール。
たまたま「タイトル」も見て気付いたので良かったのですが・・・。
どうも最近DMメールなどの発信者名、こういうのが増えている。
堅苦しい会社名よりも「気付いてくれる」というマーケティング的対応なのか。
ただ、このような要件についての連絡は不似合いのように思う。>
・・・おっと、横道。
で、そのメールには解約申請についてはWEBページの「フォーム」から入力して
という案内文とそのURLがリンク表示されていた。
契約書には「解約文書を提出」と記載があり、その文書を求めたのだけれど、
そういう対応をもって「文書」に換えたものかも知れないと善意的に推察した。
けれど、そういう確認が取れる文章箇所は見られない。
「まぁそういうことなのかなぁ」と受け取って、フォームに入力して、
最後に当方の情報と敷金相当の返金口座も入力した後、
「次へ」というボタンを押した後に表示されたのが写真画面。
タイトルはいいとして案内文が、ありゃりゃであります。
「解約の申請をキャンセルします。
お間違いなければ「送信」をクリックしてください」
・・・普通に考えれば、ここまで入力させて最後にどんでん返しと受け取る。
解約しようと入力しているのにそれ自体をキャンセルさせる、という悪意的誘導。
これをうっかり「送信」したら、詐欺的に契約を延長させられる可能性が高い。
ということで、このフォーム段階でストップしてメール送信先に電話。
苦情を申し立てたら、コトバでの謝罪はあったけれど、
対面であれば納得できないような口調での物言いでした。
謝ればいいんだろう的な、・・・う〜む。
まぁ、今度はメール本文に内容を書き入れての返信で「解約受理とします」
と対応変更する旨伝えられ従ったけれど残念ながら一貫して誠実さはなかった。
どうも賃貸不動産業界、おかしな方向に向かっていると危惧させられる。
対面であれば人間関係の「信頼感」がベースになってスムーズに行くけれど
デジタルではもっと低位の部分から疑って対応する必要がある・・・悲しいかな。
Posted on 12月 5th, 2020 by 三木 奎吾
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第3波といわれる感染者数の拡大局面になってきています。
とくに北海道・札幌は寒さに向かう季節ですので北海道特有の、
乾燥してしかも寒冷という条件下で感染拡大の危険があるとはされていた。
その危惧のままに、グラフのような「新規感染者」の状況で推移している。
北海道は第1波が大きかったのですが、欧米発とされた第2波は比較的平穏で、
しかし今回の波はきわめて大きいという状況。しかし
このグラフで見る限り、直近では少し下降曲線に向かっているようにもみえる。
まったく未知の事柄への対応なので、注意深く対応しなければならないのは
今後とも変わらない。一進一退の状況が続くのでしょうね。
しかし今回も「GoToキャンペーンが」というような、根拠が明確でない
過度の「危機煽り」が横行しているようにも思われる。
未知への対応なので誰が悪いとか責めても仕方がないと思う。
少なくとも情報は明確にして理性的な対応を心がけて行くべきだと思います。
ただここのところ、日本は海外からの旅客は受け入れてきている。
GoToとは違うレベルの問題、日本人と外国人のこの感染症でのデータは
いったいどうなっているのかについて明確な情報が出てこない。
このことは半年前くらいのブログでも書いたのですが、不明だった。
ところがこの件について、6月段階で国会質疑があって、当時の安倍総理が
国会答弁している一部始終が国会記録で開示されていた。
あるいはメディアでの報道を見落としていたかも知れないのですが、
わたしははじめて内容に接することができたので、多くの方も知らないかも、
ということで以下、報道してみたいと思います。
質問者は立憲民主党の松原仁衆議院議員。
このことに関する質問は以下のくだり。(要旨)
●厚労省発表の感染者に占める「日本国籍」「外国籍」「国籍確認中」区分について
1 「外国籍」に区分されるものの国籍別、または白人・黒人・アジア系などの人種別の
データを持ち合わせているか。またそうしたデータを公開しているか。
していない場合、どのような理由によるものか。
2 「国籍確認中」の区分にはどのような患者があてはまるか。受診時に健康保険証や
身分証明書を所持していなかったなど偶発的な理由によるものか。
3 「国籍確認中」の区分から「日本国籍」「外国籍」の区分に変更された
ケースの件数をそれぞれお示しいただきたい。
この質問に対しての安倍総理(当時)の答弁は以下。(要旨)
●厚労省HPの「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」では、
「日本国籍が確認されている者」及び「外国籍が確認されている者」を示しているが
「外国籍が確認されている者」の国籍の公表については、
「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」
(令和2年2月27日付厚労省健康局結核感染症課事務連絡)の参考
「一類感染症患者発生に関する公表基準」において
国籍を「公表しない情報」としていることを踏まえ、取り扱っている。
また国内における新型コロナウイルス感染者等の人種については、把握していない。
というような答弁が行われているのだそうです。
なんのことはない、門前払いに等しい対応。そう決めているからそうなんです、と。
ちなみに「一類感染症」とは、
〜エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱およびラッサ熱の
ウイルス性出血熱、ペスト、マールブルグ病が指定。〜で新型コロナはこれに該当。
ようするに厚労省の一部局の「事務連絡」判断で「国籍を公表しない」とのこと。
少なくとも政治的にこのことは判断されたわけではないというのですね。
ここで松原議員、大いにツッコむべきだと思うけれど進まなかった。
厚労省という役所の壁か、アリバイ的情報のガス抜きか。
この質疑についてその後も、論議が深まった形跡はない。
しかし感染症の恐怖に慄くばかりの民に、冷静な情報は不可欠。
より多く日本人が罹っているのか、外国人が罹っているのかという情報は、
これだけの社会混乱のなかで秘匿するよりも公開する方が
パニックを抑えるという意味では優先度が高いのではないかと思われます。
まぁ差別に繋がるのでは、という危惧は想像できるけれど・・・。
せっかくこの問題に踏み込んだのだから、論議は深められるべきではないか。
国民の知る権利として優先されるべきではないかと思われる。
Posted on 12月 4th, 2020 by 三木 奎吾
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写真はある古民家施設で囲炉裏を囲んでの子どもたちの様子。
っていうか、その履いてきた靴の様子がなんとも楽しくなってしまった次第。
わたし自身、母親から靴の履き方、揃え方を諭された強烈な記憶がある(笑)。
わたしは幼い頃、靴の右左に無頓着で、よく反対に履いていた。
母親はいつ言おうかと考えていたのでしょうが、あるとき玄関で
「見てごらん」と言って、靴の右左を教えてもらった。
いつもやさしい母親が真顔で諭すので深く足下に気付かされた。
「そうか、靴って右足、左足で違いがあるんだ・・・」。
その記憶が鮮烈、強烈に残っている。まさに三つ子の魂、百までもというヤツ。
日本人の「しつけ」としては、こういう靴の脱ぎ方について
作法として親から言われることが一般的なのでしょう。
なのでこういった場面、状況の場合は、ここから帰るときの進行方向に向かって
両方の靴の先っぽを向けて、2つの靴を左右も整えて脱ぎそろえるのが理想。
この場合には画面の上側に囲炉裏の部屋があるので、上から下方向にそろえる。
しかし、この見えている靴12足でそういった「傾向」が辛うじて見えるのは
最右側の1足だけという状況であります(泣)。
この1足にしても上がり床面からは遠い位置なので、やや減点対象。
しつけの観点からはまことに嘆かわしい日本民族の未来であります。
しかしまぁ、子どもたちにとっては楽しい「囲炉裏」体験のソワソワの場面。
われ先に、他の子よりもいい場所を確保したい一心がそうさせたのかも。
しかし、そういうしつけ問題とは別に、しげしげと見ると
靴の脱ぎ方の様子で、なんとなく性格とか人間性とかが表現されていてオカシイ。
よい子の模範的な揃え方は、それはそれで素晴らしいけれど、
大混乱しているような靴の盛大な乱雑さも、これはこれでなんとも可愛い。
物心ついて、あるいは大人になって、では確かに困るけれど、
天真爛漫なこどもらしさがそのまま表現されているようなのは魅力的。
「おお、囲炉裏だってよ、もち食べられるかも、うまそう!」
というような心の動きが正直にこの脱ぎ散らかしから漂ってくる。
もちを食べさせながら話をするのには、こういう不揃いな子どもたちも
オモシロいかも知れないと、ホッコリさせられる。
きっと、その子どもたちに自分との同質性を感じるせいでしょうか(笑)。・・・
Posted on 12月 3rd, 2020 by 三木 奎吾
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きのうなにげに朝6時過ぎ、いつものように北海道神宮参詣。
朝の気温はマイナス3度と確認しましたが、風も少しあって体感はもっと厳しい。
足下もすっかりスパイク仕様の冬用シューズ、外装上下ともダウンで防備し
アタマには毛糸の帽子という完全冬用スタイルであります。
本格的に根雪になった方がむしろ断熱され、それ以上は地上が凍り付かないので
かえって今時期がいちばん寒さが身に堪えるともいえると思います。
北海道人、暑さにも弱いけれど、寒さへの弱さもハンパない。
で、神宮にたどりついたら冬季時間体制で朝7時でなければ本殿境内は
戸締まりしているところ、開場しているではありませんか。
「あ、そうか」と思い出したのが、毎月1日に神さまから下賜される「塩」。
ここのところ1日は決まって雨で散歩中止していたりで、わたしは遭遇していなかった。
このために参道が1列になっていて、参拝に10分以上は掛かりそう。
見ると先頭では下賜塩が品切れしたようで、行列が進まない。
わたしは、特段下賜塩が目当てではなかったので、列を離れさせていただいて
こころしずかに毎朝の参詣をさせていただきました。
振り返ることもなく行列を離れましたが、みなさんけっこう忍耐強く待たれていた。
ことしもそういうことでついに「師走」であります。
すっかりコロナ禍で1年が、まったく違う様相で去って行く気がします。
仕事ではスタッフの安全最優先で「テレワーク」体制を組んでいました。
非常事態宣言期間中と期間明け、そして第3派襲来と
「働き方改革」が待ったなしで迫られるような状況だったと思います。
通常のビジネス業務はそれはそれで進めつつ、
しかし仕事のプロセスでは実にさまざまな困難が襲っても来た。
東日本大震災でも、「未曾有の」ということを経験しましたが、
今回のコロナ禍は同じような「非常事態」とはいっても
まったく始末の悪い状況だと思います。
しかし弱音を言っても仕方ない。この環境の中で
なんとか創意工夫で戦っていくしかありませんね。
Replanの旗艦誌「北海道版」も年末年始発売最新号が最終段階の真っ最中。
Zoomなどの手段も駆使しなにより集中力で仕事と向き合うしかない。
テレワーク、リモートワークというものももはや業務の基盤になっているし、
Slackとかchatworkなどの業務連携ツールも使い始めるともはや手放せない。
<でもこういった環境にMade in Japanがまったくないのは、う〜む。
たぶんアメリカとは起業創業に際しての金融環境が違いすぎる。
中小零細企業にいつまで「個人保証」を続けるのでしょうか、ニッポンは。>
こういった環境要件はコロナが収束しても継続していくことは確実。
まさに環境激変の2020年師走でありますが、
寒さに向かってアフターコロナ戦略を練って乗りきりたいと思います。
Posted on 12月 2nd, 2020 by 三木 奎吾
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能登・上時国家その2であります。
通常通用口の「大戸口」を入ると広大な「庭」と呼ばれる土間空間。
見上げると豪放そのものの太い構造材が力強く組み上げられた天井空間。
そしてその座敷側入口上部には、なんと駕籠が4機も吊り下げられている。
上時国家当主が外出するときには、この駕籠を降ろして
用向き先まで移動させたものでしょうか?
っていうか、駕籠の収納方法が太い梁に吊り下げるというのがすごい。
イマドキ住宅で、豪華な高級車を室内インテリアとして
住まい手の自慢のタネとして「どうだ」と見せることがありますが、
インテリア的な意図としては江戸期にもそのようなことだったのか、オモシロい。
そうではなく、実用性としてあったのだとしたら、
それはそれですごいものがある。
というのは、駕籠に乗って移動するのには当然「担ぎ手」が不可欠。
短距離であれば1台2人でしょうが、長距離移動ならば4人くらい必要。
能登の「代官所」まで、輪島としてもそこそこの距離を
こういう移動手段で移動した、それが常態化していたとすれば、
その財力はハンパないレベルなのでしょう。
きのうも触れましたが、この建物の建築それ自体が大納言格式。
北前船交易での「信用装置」と考えて、28年もの時間を掛けて
地元有数の宮大工に思う存分に腕を振るわせていた。
江戸時代の経済活動は日本海側の方が活発だったとされるけれど、
その中継点として、この上時国家の重要性、比重がしのばれます。


北前船交易では船が着岸すれば、活発なビジネスが展開した。
この場所ばかりではなかっただろうけれど、この土間空間、庭は
その中心スペースとして交易活動が行われたでしょう。
また、高級客人、たとえば高田屋嘉兵衛などには、駕籠が差し向けられて
丁重にこの屋敷まで案内されたかも知れない。
そして間取り的には大茶の間という自由空間から、王侯貴族クラスの接遇として
「上段の間」まで、どんな階層にも対応可能な接遇空間。
江戸期の流通経済中心の輝きがはるかに残照しているように思われる。
Posted on 12月 1st, 2020 by 三木 奎吾
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一昨日「神棚」のワンピース先出し紹介の家であります。
いまは、コロナ禍での移動自粛期間。GoToには罪はないと思うのですが、
県境をまたいでの移動については、出張などはしにくい状況。
とくに開拓型の掘り起こし営業ではWEB、Zoom環境での実現は困難。
まったくビジネス環境は変わったと思わざるを得ない。
なのですが、逆に過去取材の膨大な写真データ類の整理整頓には好都合。
そういうなかから、いろいろな「いい家」が自然に浮かび上がってきます。
源平壇ノ浦合戦での捕虜、平時忠が能登に流人として流され、
その息子・平時国が家を継いで以降、「平氏」姓を秘匿して
セカンドネーム時国を姓として家を興してからの名家。
時国氏としても800年以上で、平氏の出自を考えれば1500-1600年の時間を
優に遡ることができる家格の住宅であります。
ブログ記事でも一度紹介しておりますが、シリーズの1篇として再掲。
写真の家はいまから188年前に竣工した本家・上時国家。
家という概念が、このように表現することで日本語として二重であるとわかる。
家系という概念の家と、建物概念としての家と日本人は使い分けている。
さらに建物概念としての家も、そこに生活手段は自明のこととして
備わっていることが普遍的原則だったと思う。
この時国家も鎌倉幕府初期、平家としての出自から源氏政権の迫害を受け
財力は持っていても、山中に身を隠さざるを得なかった。
3代将軍実朝が死んで源氏嫡流が途絶えたことでようやく「農地を買った」とある。
生産手段の裏付けのあるものが「家」として定住に値するということがわかる。
一所懸命というコトバは日本人に深く染み込んだ土地信仰だけれど、
具体的に農地はしっかりと耕せば、いのちを繋いで行ける生産手段。
そういうベースを確立させた上で、能登の海運上の立地条件を活かして
活発な北前船交易などで経済的繁栄を実現させてきた家系。
一方で住宅デザインとしては、「大納言」という家の家格を表現させることに
その経済力を注ぎ込んだとされている。
いま、国指定重要文化財として扱われるほどに、精緻に作られている。
玄関は2つあって、正式の「式台玄関」と通常の「大戸口」。
右側の式台玄関には唐破風が渡されて、この家の外観デザインのポイント。
左側大戸口は、生産手段としての農家の土間空間、庭に至る通常出入り口。
いかにも「格式建築」の表情を外観でも見せている。
2枚目の写真は「上段の間」の様子。壁上部が湾曲して格天井に連なっている。
枡形のなかには金箔が張られていたという。
書院造り的な様式、鄙にあるとは思えない格式建築。


そして心の字型の池を取り込んだ風格のある庭に向かって
「御縁座敷」という畳敷きの縁側空間が幅1間で広がっている。
その外側に板張りの「縁」があって、庭を鑑賞する仕様。
この建物を設計施工したのは、地元能登の宮大工「名工・安幸」。
竣工までに28年掛けたというのは、いわゆる「大納言家」の故実を
丹念に江戸末期に復元再建する工事意図から、
京都などの名建築を訪ね歩いて、その意匠の探究に精魂を費やしたのではと思う。
しかし、唐破風という平安期にはありえないデザインも取り入れた。
建築の用途としては、北前船交易での交易拠点として
耳目を驚かすような家格を表現する格式建築を見せることで、
交易での価格などの交渉を有利に運ぶ主要な目的があったかも知れない。
平安期からの名家という演出装置は、ものの価値に裏付けを与えた側面があった。
ビジネスマインドから考えれば優位な「営業戦略」とも言える。
「わが家は平家出自、平時忠公を先祖とする家柄でして・・・」という口上は
高田屋嘉兵衛らの江戸期有数のビジネスマンたちを信用させる価値があった。
住むための建築であれば28年も時間を掛けるのは不都合そのもの。
むしろ、「いや時間を掛けてホンモノを追求している」と宣伝したのではないか。
そうであれば時間を掛けることそれ自体も価値がある。
交易の「目利き」力、信用力の裏付けとして影響は大きかったに違いない。
本日はいわば建築のオモテ側のデザイン。他の側面はあす以降に。
Posted on 11月 30th, 2020 by 三木 奎吾
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先週書き忘れていたけれど、日本の7-9月期のGDP速報が出た。
上の2番目の表は日経の記事からのもの。
事前には18%程度とアナウンスされていたが、21.4%と発表された。
アメリカやEUは4-6月期の「谷」が深かったので、リバウンド幅も大きかった。
日本はそこまでの巨大さではなかったのでそれなり。
で、一番上のグラフは数量物理学者・高橋洋一氏の
安倍前総理が座長を務める直近25日の自民党内経済財政研究会での
「ポストコロナの経済政策を考える」講演資料より。
安倍前総理は病気回復後、経済政策に依然強い関心を持っているようだ。
高橋洋一氏はいまの菅政権でも参与就任の近代経済学系の財務省OB。
長く安倍政権での経済政策にも関わってきた人物。
経済学領域では昔から日本の学会主流は「マルクス経済学」と言われる。
マルクス経済学では現実の経済運営をどうすべきかの判断力がないとされる。
それに対して世界標準の経済財政の現場的にはケインズ・近代系。
財務省主流とは意見を異にするとされ、自民党政権側では重用されている。
財務省の言うことだけを聞いていてはひたすら「健全財政」という均衡論に陥る。
いまはコロナ禍での世界経済の非常事態のただ中。
2019年段階の日本のGDPは540兆円。それに対して、いま直近の数値では
2020年度は対前年で30兆円のマイナスで、通常成長率からの下落率では
40兆円のマイナスになっているとされていた。
第3四半期の上昇率が見た目の大きさで目立つけれどマイナス回復には遠い状況。
いま第3次補正から2021年度予算策定が直近の未来指標になるけれど、
最低30兆円規模の手をうたないと不況から増えるとされる自殺者が
足下の月2000人台から来年半ば過ぎには月6,000人規模に増加すると予測。
自殺と経済状況には相関性が認められると。
要するに、経済が縮小しているので財政出動でそれを下支えしなければ
深刻な不況が襲ってくるというアナウンス。以下nippon.comから要旨。
〜警察庁のまとめで、2020年10月の自殺者数は速報値で2153人となった。
前年同月比で39.9%(614人)の増加。自殺者数は2010年から10年連続で減少。
20年に入ってからも1~6月までは前年同月比マイナスで推移していたが、
7月以降は4カ月連続で増加している。1~10月の累計の自殺者数は1万7219人で
前年同期より160人多い。〜

一方でこのグラフは直近の世界の人の往来状況。
Appleから発表されたデータと言うことでスマホの電波から
ビッグデータとして紡ぎ出されたものだということ。日経記事より要旨。
〜街角からは人影が消えつつある。地図アプリデータ分析した米アップルによると、
公共交通機関の利用は27日までの1週間で、1カ月前と比べて
イタリア、ベルギーで3割強、独仏で16~18%減った。
外出制限はユーロ圏の雇用の75%を支えるサービス業を苦境に追い込みかねない。
・・・厳しい規制を導入すれば経済は落ち込むが、規制をためらえば
感染拡大で経済はさらに大きな打撃を受ける。経済と感染抑止は両立できるのか。
ワクチンや治療薬が見つからないなか欧米当局は最適解を探しあぐねている。〜
こういった環境の中で個別の仕事環境を考えていく必要がある。
当面は第3次補正の規模と内容がどういうものになるのかが焦点。
単純に日本のGDPは前年540兆円からどう着地していくのか、
いま直近の景気投資マインドに大きく影響するので、注目せざるを得ません。
世界も日本も財政経済運営はいまが胸突き八丁というところでしょう。
Posted on 11月 29th, 2020 by 三木 奎吾
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信長の家、安土城にハマっておりましたが、
きょうはまた遡って、源平合戦ころ由来の能登の旧家にタイムスリップ。
平家の配流人です。軍事の清盛とは肌合いの違う文官系の平時忠の家系。
平時忠は壇ノ浦合戦で捕虜となって3種の神器のひとつを守っていたことで
死罪を免れて能登に配流されたのだという。
その後、息子の「時国」が家を継ぎ、鎌倉幕府に配慮して
平氏の名を変えて「時国」というセカンドネームを姓にしたということ。
一族は一時山に隠れ住んでいたけれど頼朝直系の源氏嫡流政権が途絶して
ようやく追究の手が弱まり、周辺の農地を買い求めることができたのだという。
それ以来25代にわたって家が存続し続けてきている。約1000年。
ロッキード事件で田中角栄を裁いた判事は、時国家の末代の方とも。
というようなことですが、敬愛する歴史家・網野善彦さんが
この「時国家」に残された古文書類を整理された内容紹介を読んで、
北陸出張の機会に足を伸ばして写真撮影してきていた。
日本の民俗、家系というものの実質が時間を越えて迫ってくる。
なんといっても源平期からすれば1000年の時間規模。
そういう「家」があり続けていることに率直に感動させられる。
とくに北海道のように150年しか時間積層がない地域からすれば神代の感覚。
残念ですがこの上時国家、公開はこの11月29日で終了するという。・・・
この写真の「神棚」は、いま「上時国家」として残る住宅に
残され、飾られていたものです。
この国指定 重要文化財の住宅は、いまから188年前の江戸期に建てられたもの。
「名工・安幸」と名の残る大工棟梁がなんと28年かけて竣工させた。
おいおい、でありますが、時国家は北前船交易にもからみ、
活発な江戸期の経済活動に参画していたので、
このような破天荒な本物志向で住宅建築、発注したものでしょうか。
それとも、この棟梁さんはあちこち掛け持ちでなかなか工事に集中できずに
だらだらと時間が掛かったのでしょうか?
残った住宅を見ると、さすがに大納言格式といわれるほどの出来映えであり、
大工棟梁としての人生をかけた労作であった、という方が正解に近いでしょう。
多少の工事中抜け期間はあったでしょうが、作り手の気迫は継続したに違いない。
よく神棚は、その家を建てた大工が、最期のワンピースとして
手づくりで作るというように言われます。
この上時国家の入口玄関にはこの神棚と同じ唐破風が装置されていますが、
神棚に唐破風までデザインされているものは見たことがなかった。
先日、富山の宮大工の手仕事の装飾木工品をわが家にいただいたのですが、
こうした手づくり工芸品の佇まいというのは、格別に感じる。
家に装置させてみて、その時間積層がじっくりとつたわってくる。
いわば画竜点睛というようなコトバの感覚に近い。
それが最期に一点加わることで空間にいのちが吹き込まれるみたいな
そういう空気感が漂うものだと実感させられる。
で、写真整理していて、やはりこの神棚にはそういう作り手の気迫が
ジワジワと伝わってくるパワーがあると感じられるのです。
28年間も手塩に掛けて作り上げた住宅。ほぼ職業人生時間に相当する。
ちょっと気の遠くなるような時間をひとつの住宅に対して掛けて
さてどんな心境で最期のワンピースを仕上げたか、想像力を掻き立てる。
現代でこんな家づくりというのはどんな高級住宅でもありえないだろう。
そんな家の様子を写真構成でまとめますが、その最期のワンピース先出し。
あ、注連縄も手づくり感ジワジワ・・・。
Posted on 11月 28th, 2020 by 三木 奎吾
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本日は連休中でトピズレ、気になる時事経済政治ネタ。
先週11/20日米中など21カ国・地域のアジア太平洋経済協力会議(APEC)
首脳会議において中国・習近平が「TPP参加を積極的に検討」と 言及。
これに先立って11/15にはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)も締結。
このRCEPもTPP(環太平洋パートナーシップ協定)のどちらも日本が
安倍政権時に戦略的に推し進めた多国間貿易環境。
TPPはトランプ政権が「アメリカ第1主義」で国際協調から2国間交渉に軸足を移し
その後、日本が中心になって国際協調の枠組みを先導してきた。
RCEPも当初の「日中韓」の枠組みから大きく拡大させて全15カ国でのスタート。
日本はインドの将来的参加にも含みを持たせたカタチで締結にこぎ着けた。
TPPは言わずもがな、中国独裁に対し自由貿易原則を対置したもの。
とくに投資の自由とか国有企業規制について明確に規定している。
中国の参加は自国体制危機を招くのが必至で、ありえないとされてきた。
その基本条件は変更されるわけもないので、習近平のこの発言は、
トランプ後の世界の情勢を見ての「孤立回避」作戦ではないかと思われる。
いま世界は対中包囲網の顕在化、対中認識が非常に厳しい局面にあり、
中国としてそこからどう脱するかの戦略判断からの観測気球。
バイデン政権樹立となれば、経緯もあるので直ちにではないにせよ、
アメリカのTPP(復帰)参加は濃厚。
機先を制してこのタイミングで中国は孤立回避策を打ち上げたというところか。
日本の菅政権にとって、これらの貿易協定は日本が中軸であり、
さらには日本経済復元の戦略、当面する世界戦略として最重要。
EU離脱後のイギリスにとっても魅力的な経済圏であり、
バイデン政権の動向も見通していち早く中国が反応したということだろう。
そういう意味では中国はなかなかにしたたかだと思わされる。
自国体制の根幹は絶対死守するだろうけれど、話し合いのポーズを取ることで
その果実、市場にはエントリーしておきたいというのが真の狙いだろう。
場合によっては譲歩もちらつかせながら、中国有利に持って行く底意。
日本の国益にとっても中国市場は無視し得ないけれど、
同時に中国の外交戦略からもいまは日本くらいしか懐柔しうる相手先はない。
ただ天安門事件時点での天皇訪中は日本の助け船だったけれど、
それに対して直後に中国は反日教育を対置してきた過去を持つ。
いまは習近平国賓招待が中国としてはカードになると踏んでいたけれど、
菅政権はスルーし続け不透明化するなかでの今回のTPP「参加検討」発言。
この変化球、揺さぶりは日本へ向けられたモノと考えた方がいい。
ただし以前のことは決して忘れるべきではない。冷徹な国益追求を目指すべき。
外交では欺された方がバカを見るだけなのだ。
今後の世界の焦点はこうした経済面にスポットが当たっていく可能性が高い。
日本経済にとって、ポスト中国市場も見据え自由で開かれた環太平洋市場を
自らの主導権で確保できていくのは最上戦略。大いに活用すべき。
日本企業としても、中国国内法に影響されない経済圏は貴重な存在。
中小零細企業も含めて、打って出る、あるいは国内市場に導引するのは重要。
こういった市場での活動が人口減少下での成長維持には欠かせなくなる。
コロナ対応政策には、ジェトロが海外のECサイトに「ジャパンモール」を作り
そこで販売する日本商品を募集しているという事業もある。
地方中小事業者でも海外戦略、こういった制度活用が考えられるかも。
外交的にこのTPP、RCEPは日本の平和の「武器」になる可能性が高い。
競争と協調の世界の戦いは矮小な国内政治をはるかに越えてドラスティック。
ポスト・トランプ、世界は徐々に陣取り合戦が始まっている・・・。
Posted on 11月 23rd, 2020 by 三木 奎吾
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