本文へジャンプ

ガラスのピラミッドで宇宙遭難鎮魂曲を聴く

友人から、札幌市東区の「モエレ沼公園」のガラスのピラミッドで
音楽会をやるから聞きに来い、という案内を受けた。
この友人というのは高校時代からずっと交友のあるヤツで
頭はいいことは折り紙付きだった。
学園紛争華やかな時期の友人たちなので、
そういったスネに傷は受け続けてきているのだけれど、
バリケード封鎖の中から試験を受けに行って
北大にトップで合格した学業以外にも、音楽的にも天才の誉れ高いヤツで
誰にも理解不能(笑)な「音楽」を継続してきているようなのだ。
高校生時代から、そうした音楽活動を始めて
北大でも、継続的にやっていたようだけれど、
その時期はわたしは東京暮らしだったので、接点はない。
で星霜を経て、いまは臨床医を経て高齢医療に取り組む一方、
最近、この音楽活動への思い、もだしがたく、
再度、知人たちを巻き込んで音楽的な挑戦を開始し始めたようなのだ。
高校の時に聞いた音楽は、「分離Ⅳ」という作品で、
そのあまりのわからなさが大受けして、当時吉本隆明の著作以上に
母校では心酔する連中が続出していたのだ。
ただし、その音楽について正面から質問しようと考えるヤツはだれもいなくて、
一度、北海道の音楽界では名の知られた当時の高校の音楽の先生が
「Yくんのあの作品は●▲が、△○したものなのだね?」
という呪文を発した以外、誰も論評することをはばかられていたのだ。
ちなみにその先生の言葉に対して
「まぁ、そんなところです(笑)」と答えていたというから、
なかなかに人への暖かみは感じられるヤツなのだ(笑)。

今回のガラスのピラミッドでの音楽会、というのは、
プログラムに書かれたテキストを読んでみると、
かれが北大時代に行った「アクエリアスの春」という現代音楽の再演が
大きな動機になっているということだそうだ。
たまたま訪れたガラスのピラミッドに強く音楽活動再演の刺激を受け、
この巨大な「残響空間」にふさわしい音楽として、
アポロ13号の宇宙遭難事故で母船として、
奇跡的な飛行士たちの地球帰還のために働き、その任務を終えて
大気圏に燃え尽きたコールサインネーム「アクエリアス」への鎮魂音楽を
この場所で再演したいと思ったのだという。
ガラスのピラミッドは、残響がすさまじい空間で
たとえば拍手すると、鳴り終わってから数秒してから
そのさっきの音が耳に帰ってくるという恐ろしい空間。
でもだからこそ、単音で勝負するような楽曲には
まさに宇宙的な広がりを感じさせてもくれる。
「アクエリアスの春」は、
解題テキストを合わせて読んでみて、確かにこれは、
地球と宇宙船との間で交わされていた交信音に着想したに違いない
ある種の「音楽」であることは間違いないと理解出来ました。
この会場でこそ、この曲はふさわしいと思わされました。
確かに、かれの直感は正しい。

高校時代とは違って、
こういう難解な音楽に、わかりやすい宮崎駿さんの映画音楽などを
たっぷりと食前酒として配したり、
また仲間作りも、人間的な円熟さで包み込むように組織していたりしていて
ほほえましく音楽鑑賞させていただきました。
終演後、アンコールを申し入れたら、
「ない」と笑って返されてしまいました。
ふむふむ、しょがないか(笑)。

Comments are closed.