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東北が抱える、ナマの住環境テーマ

寒冷地である東北の住環境を研究する学際組織である
「住まいと環境 東北フォーラム」(吉野博理事長)では、
東日本大震災を受けて、活発な研究・啓発活動を展開しています。
国の建築関係諸機関との研究連携の地域での受け皿として
被災地での、さまざまな「住環境」についての研究活動が行われている次第。
今現在は、仮設住宅から復興住宅へと向かう時期に差し掛かってきていますが、
しかし、被災地の住宅環境研究組織として
今後の国の「仮設住宅」施策についての提言をまとめていく活動もきわめて重要。
きのうは、そうした志向からの発表会が行われたのです。
テーマは、基本的な温熱環境についての調査報告から
空気環境、化学物質やカビなどの空気質についての調査研究活動報告。
「住みこなし方」研究といった建築社会学的なアプローチでの研究。
さらには、原発事故を受けてのまったく新しいテーマ、
放射能・放射線と住宅換気、除染の問題まで
いま、東北がナマで抱えている「住環境」問題があげられていました。
まさにリアルなテーマであって、東北に関係して活動されている
研究者のみなさんの最新の知見は、きわめて注目に値するものだと思いました。

ということですが、
やはり、福島原発事故以来のまったく新しい住環境テーマは
まことに重く、また慎重な対応が必要と痛感されました。
そういうなかでも、それぞれ丹念に問題点を抽出し、
科学的な態度で冷静に分析し、突破口を開いていこうとする姿勢は
研究者のみなさんのなかで、ある程度、見えてきているのではないかと思います。
エネルギーの問題は、国家運営から日常生活レベルでの人間の「快適性」まで
現代社会の根幹に関わる最重要テーマであることは明白。
これまでの社会が、エネルギーの自由主義、
〜利用できるものは徹底的に資本主義の論理で無限に利用し尽くす〜
そういう基本的態度で、「経済成長」のエンジンにしてきたことは事実。
今回の大きな事故をきっかけにして、
世界はそこからの変化の方向性を模索しているプロセスにあるとも言えるでしょう。
しかし激烈な資本主義の国際大競争のなかで、
現状の日本経済を維持するという必要性もある。
エネルギーキャップ、上限を決めて「節電」しようという考え方が
必然的に生まれてきているけれど、
そういう志向性で、本当に日本の経済成長性が維持できるのかどうかはわからない。
経済競争のなかでは、国家経済としてはマイナスの選択にもなり得る。
少なくとも、そういう覚悟まで踏み込んで論議していかなければならない。
で、そのことはいまのわたしたちの生活レベルの選択にも直結する。
現代の暮らしの「快適性」の進化・追求は、
エネルギー利用についての自由主義が根本条件でもあった。
そのことの放棄には、必然的に相当の覚悟が必要になってくる。
また、そのことによって生まれざるを得ないテーマ、
社会的なエネルギーの再配分についての原理原則を新たに定めなければならない。
こういった重大性を持ったテーマを、今現在の日本の社会が
理性的に、合理的に結論を出せるのだろうか。
あるいは、結論に至る理性的論議を行っていけるのだろうか?

結局、このような現代が抱える問題が
住宅の環境の中でも大きなテーマになって行かざるを得ない。
そんなふうな受け止め方をさせていただいた発表会でした。

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