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倉本聰さん新作 「明日、悲別で」

対談をお願いして以来、
ずっとウォッチが続いている倉本聰さん。
「北の国から」がすでに発表から30年を経過していますが、
日本人のある部分をしっかりとつかみ続けている作家なのだと思います。
秋田のビルダー・五蔵舎さんの岩野社長との対談を企画したとき、
岩野社長から、「東北に対しても、なにか力になってください」という
メッセージが発せられていましたが、
東日本大震災、さらにうち続く原発災害という
民族的な困難に直面している現在状況の中で
倉本さんの内側から、ほとばしり出つつある思いがあります。
その軌跡は、さまざまな発言などで確認しており、
そういった流れの中で、今回の新作舞台作品が生まれ出たということです。
悲別で、というタイトルの作品シリーズはこれが3作品目。
北海道が抱えてきた国のエネルギー政策の転換による炭坑の閉山問題、
それがもたらした人間の人生ドラマを紡ぎ出してきたシリーズです。
初演が北海道内の炭坑町で上演されたときには
観客が興奮して
「よくこういう舞台を作ってくれた」と
涙ながらに、舞台上に上がり込んできたという曰く付き作品です。
以下、HP案内文より要旨抜粋。

あらすじ
 二十年前に閉山した炭坑の町、悲別。散り散りになった若者たちは、2011年大晦日、閉山の日の約束を守って今や破綻寸前のこのふるさとに集ってくる。
  彼らの交した約束とは、大昔この炭坑の第一坑道の地下三百メートルの地底に先人達が埋めたという「希望」を封印したタイムカプセルを、みんなで探しに潜ろうということ。だが二十年の歳月は、若者たちを変えてしまっている。福島の原発労働者となって津波と爆発に遭遇した者、懸命にふるさとにしがみつき空しい町おこしに励む者、そしてこの町の町会議員になり、原発汚染の福島の瓦礫を引き受け、廃坑の地下一千メートルに石棺に入れて閉じ込めようと策す者。
  三百メートルの地下に希望があり、千メートルの地下に今絶望を埋めようとしている悲別。約束を守った二人の若者が、空しくしか思えない希望を求めてかつてのなつかしい第一坑道へ二人っきりで入って行った。

 1984年に放映された「今日、悲別で」に続き、架空の炭鉱町・悲別が舞台となった人間の本来持つエネルギーをテーマとした物語です。(物語の内容、登場人物はドラマとは関係のない設定です)
 舞台化当初は「今日、悲別で」として、1990 年の初演以来、北海道内24箇所、17 都府県のみならず、カナダ・ニューヨークの海外公演を含め、8回の再演と241公演を重ねて来ました。
 そして「明日、悲別で」。
 2011年3月に発生した東日本大震災、また、それによって引き起こされた原発事故を受け、「この時期にあたり“ 希望”というものの意味、人間が本来持つエネルギーについて再考するべきではないか」という作者・倉本聰と富良野GROUPキャスト・スタッフ、そして応援して下さる方々の想いが一致し、2012 年の再演が決定致しました。構成は変わらないものの、作品の持つ意味が大きく変わっています。
 前回「悲別」公演からわずか4年の間に変わった世の中の流れを汲んだ「明日、悲別で」。
2012年の今、この作品の持つ意味について、皆様と共に考えることが出来ましたら幸いです。

・・・という舞台の初演を見ることができました。
内容については、これからの上演に差し障りがあるかも知れないので
触れることは致しません。
ラストシーン後の、多くの観客のスタンディングオベーションがすべてでしょう。
わたしもそのなかのひとりでした。
現代そのものの問題点を切開し、
多くの見る者の心底をえぐっていくような
いわば時代と共生し、シンクロしている舞台というものは、
そういう舞台を持っていることは、その時代を共に生きている人びとにとって深い意味があると思う。
いわば「国民作家」というような存在こそが、このいまの日本の状況の中で
やはり大きな力になると思う。
この舞台は、そのような思いを持って、7月には
東北各地14箇所の被災地、被災地周辺で無料で上演されるのだという。
わたし自身も東北の災害、そしてそこからの時間を共有している部分もあり、
この舞台の中では、いくつもいくつも、
今の自分の内語が、そのまま表現されていると感じました。
そして倉本さんのドラマとしてのまとめ方の巧みさに舌を巻く思いとともに
同時に、また違う想念もこころのなかに沸き上がってきたのも事実です。
しかし、それも含めてこの舞台の力は素晴らしいと感じました。
多くの東北のみなさんが、
南相馬や福島のみなさんが、この舞台をどのように受け止めるのか、
現代に生きる人間として、そのことを見つめ続ける必要があると感じています。

まだ、7月8日までは、富良野演劇工場で上演される予定です。
ぜひ見ておくべき舞台だと思いました。

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