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【日本の伝統「木外壁」で防火構造認定取得〜北総研】


写真はわたしの大好きな「海の京町家」と言われる「伊根」の街並み。
日本海に面した湾入り地形そのままに多数の木造民家が連続して
それぞれに船が住まいに接岸されている街並みです。
ながい民族の暮らし、いとなみがそのまま視覚表現されている。
生きていくために漁に出、漕ぎ出した船を見送り、また迎える「木の家」が、
いかにも民の暮らしを支えてきた様子が染み伝わってくる。
これらはみな「木の外壁」で素朴に作られ続けてきたけれど、
これほどの密集形式で建てられていれば、「防火」の問題からは
つねに脅威にさらされてきたことは明白。
日本の住宅政策とは、この「木の家の防火」ということが、
基軸的なことがらとして、いわば民族・民俗的課題として受け継がれてきている。

現代に至っても、とくに直近の「都市大火・消失」経験である戦争末期の大空襲で
首都がほぼ消失した経験から、防火性能が最大の政策課題になった。
つねに「防火」優先の建材開発が至上命題とされてきた。
そういうなかで、この写真のような「民族の風景」は
ノスタルジックではあるけれど、そのままでは「継承しにくい」景観になってきた。
住宅外壁はいま、主軸は防火外壁建材であるサイディングが主流になり、
木の外壁が持っている「時間経過感」からは印象的に隔絶のある
いわば「ツルッとした」外観印象に置き換わってきてしまった。
このようなやむなき「外壁規制」に対し民族的外観デザイン継続を願う
そういった動きはこれまでも数多く試みられてきた。
多くは外壁「防火」を区画範囲上の規制通りに叶え、規制外箇所に木を張る、
っていうような対応策を行ったり、あるいは木の外壁のその下地、内側建材部分で
防火基準を満たすという対応で制度とデザインの折り合いを図ってきた。
そういったなかで日本の住宅工法進化で最先端の北海道では
「あたたかい家」という基本性能は工法開発段階で確保され
その上でこの民族的ノスタルジーの再生に繋がる
「木外壁での防火構造」について、再度の「進化」が計られた。成果として、
地域の工法研究専門組織「北総研」から6月1日に発表された
「北総研防火木外壁(PF仕様)」が、建築基準法における
防火構造の大臣認定を取得し、実用化された。 以下発表概要。

〜(地独)北海道立総合研究機構・建築研究本部 北方建築総合研究所では、
外装材に木材、付加断熱材にフェノールフォーム断熱材(PF)を用いた
「北総研防火木外壁(PF仕様)」を開発し、フェノールフォーム協会
(申請者:旭化成建材株式会社)において、建築基準法に定められる「防火構造」の
国土交通大臣の認定を取得しました。
この「北総研防火木外壁(PF仕様)」は、道総研重点研究「道産資材を用いた
木造高断熱外壁の防耐火構造の開発」(平成29年度~令和元年度)の
研究成果の一部を、旭化成建材株式会社に技術移転したものです。
「北総研防火木外壁(PF仕様)」は、建築事業者に自由にお使いいただけます。
さらにその社会的意義として、
・木材仕上げには、高い人気があり、多くのニーズに対応できます。
・法令の防火規制に適合しつつ、可燃材料である木材を外装材に使用できます。
・北海道で広く普及する高断熱仕様の外壁であり、特殊な施工を要しません。
・道産木材の利用を促進し、道内産業の振興、森林資源の循環に貢献します。

といったポイントが挙げられていました。
新型コロナ禍の最中ですが、日本の木造構造についてのすばらしい「進化」です。
北海道内に限らず、多くの全国の建築事業者に注目していただきたい。

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