札幌市西部の高台、崖っぷちに建つ設計者高野現太さんの自邸です。
茶室という文化は非常に特徴的な住宅と精神の日本文化。
そこでの喫茶行為それ自体ということもさることながら、
やはり建築的な空間性で、興味深いものなのだと思います。
日本人で建築を作る立場のひとでこの精神性に意をもたないことはありえない。
先日も「茶室⇒茶の間」という生活文化について考えてみましたが
茶室というのは、そこで内省的な時間を過ごすことを重視した空間。
そう考えると建築人にとって、いわゆる「作法」とは離れて
自由な翼が芽生えてくる空間性なのでしょう。
そうしたものがいわば「住宅のモチーフ」として拡大していって
日本人の「戸建て注文住宅好き」ということが骨格化しているのかも。
軸組構造、寸法の規格化というような合理性進化の一方で
こういう「精神性」の自由の拡大が、日本住宅の特徴ともいえるのでしょう。
ただ、いわゆる茶室の「約束事」とか「作法」というものは
非常に制約的な側面も持っている。
いわゆる「本格的茶室」は、冬の北海道ではそもそも「機能」しない。
横引き戸の「にじり口」から出入りする、
断熱を考えた障子窓などは、なかなか想定しづらい。
凍結して引き戸は動かないし、竹小舞を見せる紙の障子窓では、
早々に破綻して雪が室内に吹きすさんできてしまう。
なので、逆に「自由な空間精神性」という本質を拡張する方向性で
高断熱高気密的な「茶の精神」の空間に挑んでいくということになる。
そのように考えると、いわゆる花鳥風月が北海道では拡張している。
ふきすさぶ猛吹雪、その一瞬の切れ間などは
花鳥風月がより先鋭化、先端化していると感じられます。
場合によっては命にも関わる危険姓もはらんだ自然のうつろい・表情を
精神性の空間から「愛でる」ということになる。
この住宅では崖っぷち・高台という立地条件を活かして
こんな大きな窓を開口させて、3畳の茶室的畳空間から望んでいる。
窓や断熱空間の性能向上という技術発展が、
こういう景観も花鳥風月的にたのしもう、という気分を生み出す。
北海道住宅の進化条件としての環境的優位性を教えられる気がする。
Posted on 1月 13th, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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