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【木を切って利用する人類知】

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八戸にある「是川縄文館」を再見。
人類も経験を積み重ね文明を創造してきて、
その進化記憶を遺すものとして、文字を作り記録を残す段階から
より体験的で直接的な映像記録、復元などが豊富に表現されてきている。
わたしが生きている時代時間だけを考えてみても、
単に文字記録・図示だけだったものから、より具体的な写真や復元として
強いメッセージ力で迫ってくるようになった変化のプロセスを体験している。
きっと現代は、そうした人類知が急速に普遍化してきた時代なのでしょう。
公共的博物的展示施設の増大のなかで、
人類知展示そのものについての進化発展も図られてきているのでしょう。

木を切って、それを加工して有用な利用をする、
という営為を人類はいつから、どのように始めたのか、
建築の材料としては、ヨーロッパ世界や中国では石造の方が
より普遍性進化方向だったかもというなかで、この列島社会では、
三内丸山とかの縄文の世から木造技術に大きく興味が集中していった。
写真はそういう原初についての基礎知識を教えてくれているもの。
下の写真のような特殊な形状を見せていた自然木に着目し、
その端部に、鋭利な石器を嵌め込んで「斧」を作り出していた。
こうした人類知は、狩猟生活の中で食料としての動物種を獲得するための
基本的道具の知見が技術基盤を提供したのだろう。
斧の形状のような木は、枝木の形などを丹念に正視し続けて、
その形状を応用するという知恵が湧いてきたのだろう。
もちろん、斧にふさわしい固い樹種を選択する知恵も同時に深まった。
現代では樹種認識仕分けは前時代までに比べてむしろ退行していて、
数種類にしか分類されていないそうですが、
木質資源の多様性・有用性への知見が深かった前時代までは、
こうした樹種への感受性は比較しようもなく高いレベルだったといわれる。
特定樹種の特定部位が、特定作業道具としてもっとも有用性が高いという
まことに知的な認識体系は、現代人には及ぶべきも無いのだと。
その斧状の木に鋭利な石を付加して、それをつる性植物繊維加工物・ひもで
くるくると巻き絞って有用性の高い道具に加工してある。
ここまでに知恵が至るのに、どれくらいの人類の世代積層があったのか、
その深遠さに思いを致すとき、先人の叡智に深く感動させられる。
木と石は、人類が自然から発見した最適な普遍的な素材だったのでしょう。
縄文の時代には、基本的生存・食料獲得のための消費時間は4時間とされ、
残余の時間に、こういった人間的生産活動も行われてきた。
やがて社会の規模が拡大して分業が明確になっていくのだけれど、
縄文の世ではそこまで分業的にはなっていなかったとされる。
しかしそういう時代でも、こういった人類知は明瞭にかたちを成していた。

いま、木造建築・住宅の情報伝達の仕事に関わっていて、
静かにリスペクトの気持ちがわき上がってきていた次第です。

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