新型コロナ禍がふたたび不気味な猖獗を見せています。
やむなくSTAY-HOME的な暮らし方で対応することが広がってきて
「庭」への興味関心が高まっているとされてきています。
Replanは北海道を基盤とした住宅雑誌として、
さまざまなテーマを「全国誌」とは違った視点、地域の注文住宅づくり
という視点から考えてきている雑誌です。
地域雑誌とはいえ、その地にふさわしい「深みのある暮らし方」を希求する
多くの注文住宅ユーザーの心理に即したテーマ展開を心がけて来ました。
そのなかで、庭というテーマはなかなか悩ましい領域。
北海道は本格的に「都市」が営まれ、現代的住環境が作られてから
それほどの時間の蓄積がない地域。
200万都市札幌であっても、まだまだ「空隙」の余地が大きく、
年間6m積雪という条件から、残余地の割合がまだまだ大きい。
庭は基本的には「塀」で区切った私有地内で人工的緑を造営する営為。
札幌も日本の一部とはいえ、ものの数十分クルマを走らせれば、
大自然が原始の環境を開放的に見せてくれる。
その魅力の前で人工が果たして敵うものかどうか、ギモンが多くの人にある。
塀で隣接地との間を区切ると、除排雪に困難が伴う。
年間積雪6mを越える地域として、除雪のしやすい平坦な建築同士の空隙が
求められるという事情が大きいのかと思っています。
たとえば上の写真のような「お屋敷」の庭の植栽群に常時1−2mの
積雪があったとしたら、その雪の管理は非常に難しい作業を強いられる。
複雑繊細な「枝ぶり保護」のために雪囲いをしても、
その年の積雪荷重が予想を超えていった場合、破断も避けられない。
そういう危険を覚悟してまで、造園にお金を掛けるのは合理的ではない。
従って繊細な庭造りという志向は弱くならざるを得ない。
ちょっと目を向ければ、都市のごく近くにすら原始の森も保全されて
すさまじいまでの「自然の美」を堪能することが出来る。
下の写真は最近よくご紹介している札幌市中心部の円山自然林。
新型コロナ禍でわたし的に地域再発見は進んでいるのかも知れない(笑)。
札幌市中央区で都心から2−3kmに原始のまま保全された自然がある。
写っているのはカツラの巨木が3本、自然のママにある様子。
幹の途中から上は破断しているけれど、それはそれで
荒々しいこの地の気候条件そのものを表現していて、厳しさの美がある。
箱庭ではない、自然だけが造形できるダイナミックな美感の世界。
しかし一方で、上の写真のような箱庭も、
建築が意志的に造形した、という美感を強く感じさせてもくれる。
この両方の「美感」の間で、まったく新しい「庭の美」というもの、
環境と共生しながら楽しめる「建築的な美感」というものもあるかも知れない。
花鳥風月という日本人的世界観、美感が北海道という大地で
どんなふうに花開くことが出来るかどうか、その可能性は興味深い。
Posted on 7月 15th, 2020 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 日本社会・文化研究
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