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建築行政の制度設計ということ

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先日の東京出張でいちばん聞きたかった講演がこれでした。
野城智也先生という東大の建築の先生なのですが、
専攻は、建築を巡る社会システムの方なんですね。
建築にもそういう分野があるということを初めて知った次第ですが、
ちょうど、国が進めている「長期優良住宅」施策の基本を方向付けている中心メンバー。
こういう考え方が、長期優良ということの概念を規定している。
講演の内容は大変多岐にわたっているので、
時間を見て、しっかりまとめたいと思っています。
この講演の中で、大変面白かったのが、
日本の注文住宅である農家住宅は大変優良な長期優良住宅であるという点。
日本住宅の数量的な大部分を占める都市住宅は基本的に賃貸住宅であり、
確かに、構造的にも、社会システム的にも簡便な作られようで作られてきたけれど、
きわめて資産性を考えて作られてきた農家住宅は
基本的に数世代にわたって継承され、
大規模な修繕などの手も加えられながら、
数百年間の長きに渡って延命してきた建築ばかりであるとされていました。
まさに、言われるとおりだと同意できます。
日本の普通の考え方に木造建築のもろさ、みたいな誤解が
長くはびこっている気がします。
それは、度重なる都市圏での大火火災の経験が、
いわば、社会的な常識として、木造は燃える、
という安易な常識を形成してきたと言えるのだ、ということ。
そして、長期優良住宅を考えるには、
延命を担保する、社会的なシステムを設計することのほうが
建築自体の強度をどこまでも重装備にするよりも、
はるかに効果的であり、追求すべきである、という考えなのですね。
こうした考え方から、
究極的には、各戸に「住宅ID」を付与し、
その作られようが常に明確に把握できるように
建築を構成するいろいろな素材にICタグを埋め込んで
常にチェック可能にする、というような方向性を目指しているようなのです。
そのための「社会実験」は多様に取り組まれているようであり、
その様子も詳細に報告されていました。
わたしのブログでも、江戸中期の農家住宅の家屋記録保管を
ご紹介したことがありますが、
まさにそのような社会的なシステムが必要なのだと言うことですね。
ただし、江戸期には「家制度」が明確化して、
長子相続システムが基本的社会システムとして根付き、
権力の側でも、それを積極的規範として社会に強制した、
というような事実が大きかったと思います。
もし今日、長期優良住宅を社会システムとして考えるべきだというのであれば、
実は、この「家制度」という延命システムの代替制度創出まで
取り組んでいく必要があるのではないかと思われた次第です。
それは、民族的なレベルの同意形成が必要であり
単に、ICタグで解決出来る問題ではないのではないか、
根本的な問題に注目しながら、
そこから出てくる結論はどうにも目先的ではないのか、
というような思いが募ってきます。
いうまでもなく、今日社会では
結婚すら共通的な社会規範とは言えなくなっているような
「個人」を基本的な単位とした社会形成が行われており、
「家」の存続を、必ずしも保証するような社会システムではない。
端的に言えば、相続税を3代も払い続ければ資産がなくなるか、
きわめて中産階級的なレベルでしか「資産継承」が行われない、
という現実があります。
国としては、このような中産階級的な建築としての住宅を
「長期優良住宅」としてのレベルまで引き上げたいと考えているのか、
このあたり、どうも未消化ではないのかと思われたのが実際です。
みなさんは、どのように思われるでしょうかね。
北のくらしデザインセンター
NPO住宅クレーム110番|イザというときに役立つ 住まいのQ&A
北海道・東北の住宅雑誌[Replan(リプラン)]|家づくり・住まいの相談・会社選び

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