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棟方志功というひとがら

棟方志功さんは、靑森を代表する芸術家として
あまりにも著名であり、その世界の中に存在するわれわれとしては
空気のように感じていて、意識はしない存在。
人に聞いたら、その「記念館」があると聞いて、訪問してみました。
絵や版画自体の素晴らしさは言うまでもありませんが、
その記念館で、DVDの公開がされていて
思わず見入ってしまっていました。
「彫る 棟方志功の世界」という映像作品であり、
あとで聞いたら、その作品自体が
文部省特別選定・ベルリン国際映画祭グランプリ(ゴールデンベアー賞)
・キネマ旬報ベストテン第1位・・日本紹介映画コンクール作品優秀賞
などの賞を総なめした作品になっている。
1975年製作 カラー38 分 (税込)21,000円
企画・制作・発行/株式会社毎日映画社
っていうものだった。

「わだばゴッホになる」という内語を抱いたまま、
画業に生きたそのひととなりが、映像作品いっぱいに叩き付けられている。
まるで主演・棟方志功の存在自体の表現作品だと思った。
透徹して画業を追求した生き方のすさまじさが
映像を作る人たちにも乗り移ったかのようだった。
21歳のときに画業を志すきっかけが、
津軽地方で初めて墜落した飛行機の現場を見に行くときに
あまりに多くの人並みで道を踏み外して泥田の中に落ち、
その瞬間に目に飛び込んできた野の花の美しさに
思わず我を忘れて、この美を表現したいと思ったという語りの下り。
よく意味不明である早口の津軽弁が、
明瞭な作家の息づかいを余すところなく表現している。
子どもたちの版画作品大会の選者として、
万を超す作品を、不自由な近眼の片目で次々と凝視し続けていく様は
まさに人間の迫力を感じさせてくれる。
そして豪放磊落な茶の飲み方には目を見張らされる。
かたちの緊張感に満ちた茶道の動作振る舞いと同じようなんだけど、
その振る舞い方の本質的な意味が直接伝わってくる。
茶碗をぐるぐると回すのは、
碗の底に堪らざるを得ない抹茶を最後まで完全に飲み尽くすために行う、
自然な営為、ふるまいなのだと伝えてくれる。
まさに天才のふるまいだから、説得力がある。
作品への万の解説よりも、この映像が語っているものの奥行きは深い。
感嘆させられました。
もう、棟方志功の世界から離れられなくなった。

しかし、38分の映像が21000円であります(汗)。
むむむ、確かにその価値は十分理解できる。
謹んで検討しております(笑)。

<写真はきのうも紹介の弘前城>

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