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おだやかな芸術者の終の棲家_2

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きのうの続きです。
最近だんだんと、死まで含めた生き方を考えるようになってきた。
写真は、皇居宮殿の襖屏風絵を描いた山口逢春さんの
葉山の終の棲家の1室です。
以下、美術館HPよりの引用。

山口蓬春記念館は、山口蓬春が昭和23年(1948)から
亡くなる昭和46年(1971)までを過ごした邸宅であり、
既存の木造2階建て家屋を自邸として購入後に画室をはじめとした
増改築を建築家・吉田五十八が手がけました。
現在の建物は、その構造から昭和初期に建てられたと考えられ、
蓬春は、昭和23年(1948)に五十八の助言もあり、
当時売りに出されていたこの建物をドイツ製カメラ「ライカ」一式を
売却することで手に入れました。その後も五十八によって増改築が行われ、
昭和28年(1953)の画室の増築のほか、
昭和32年の母屋の一部増改築などが行われています。

置かれた椅子の佇まいに、
まるでそこに山口逢春さんの視線がそのままあるように感じられた。
椅子って、こんな「空間表現」が可能なのかと
驚くような思いを持ってしまった次第です。
これは一種の美術表現であるかもしれません。
吉田五十八さんの設計によって建てられた自邸は
いま、美術館としてそのまま公開されているのですが、
そのなかでも、この室はとりわけ感慨の深い演出構成がされている。
手前側には、吉田五十八さんの設計イメージ通りなのか、
座卓は艶消しの表面仕上げだけれど、モダンを感じさせるもの。
そして和室側はやや光を制御した空間であるのに、
その先の縁空間には、庭の眺望、さらに太平洋の海が広がっている。
「そこに住む、魅力の発見・最大化」そのままの光景。
そこに置かれた椅子は、この建物が
ある芸術者の「数寄」のために、精魂込められたものであることを
まことにわかりやすく伝えてくれています。
自邸がそのまま作品美術館になっているという意味合いが
まっすぐに伝わってくる思い。
芸術者としての、山口逢春さんと吉田五十八さんが
コラボレートした「環境芸術」のように思われます。
建築と芸術の両方を楽しむような体験ですね。

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