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室町期の木造建築工事

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民衆の仕事の様子とかって、なかなか記録される機会はない。
漁民の日常の衣類はどんなものだったのか、
そういう基本的なことも、なかなか確実な資料って、ないのだそうです。
この写真のような絵巻物で残される様子っていうのは稀有なんでしょうね。
これも、歴史民俗博物館での展示からです。
シャッターを切れないので、なかなかピントを合わせるのが難しいのですが、
雰囲気などはよくわかりますね。
まさに「建て方」工事の真っ盛りの様子です。
お寺の新築工事のようで、雲形の軒先造作も見られるのでわかります。
民家では、日本ではこういう「せり上がり」の軒先表現をしない。
公共的な、あるいは高級建築の象徴として、
こういう木組み表現をしたのだそうです。
日本建築では多雨の気候にあわせて
屋根が大きく作られるのが特徴で、そうすると
軒先の構造補強を図る必要があり、
こういう表現が進化したのでしょうね。
柱は礎石のうえに立てられて、その間に間柱を受ける横架材が見られます。
粗組みされて、足場板が渡され、活発に職人さんたちが動き回っている。
天候をにらみながら、なんとか早く仕上げたいのがこの「建て方」。
大量に一気に、職人が投入される工程です。
ノミやカンナを使って、構造材に切り込みを入れたりしています。
ほぼ全員、片肌状態ですが、烏帽子はかぶっている。
建築のことを、作事というように言うのが一般的。
このような様子を見ていると、かなりの寸法精度を要求される
こうした大型木造建築は、当時の建築技術の粋を凝らしたものだったのでしょう。
一般的には、地方ではたぶん、竪穴住居程度。
これだけの労働力を動員する仕事は
それだけ資金も必要であり、
時間もかかった大造作工事だったことでしょう。
今日まで残る寺社建築は、基本的には公共事業ということも出来ます。
しかし、今日の公共事業と比較して、圧倒的に人手がかかっている。
その意味で、使い込まれてくる色艶の出方が
鉄筋コンクリートと鉄、ガラスの現代建築とは比較にならない
「審美的耐久性能」が経年変化とともに募ってくる。
つい最近まで、日本全国で作られ続けた大型の箱物公共建築って、
遙かな後年まで、はたして残っていくものかどうか、
たとえば東京都庁舎のように、その維持管理費用の莫大さを考えれば、
たいへん疑問に思わざるを得ない。
技術が残り続けるためには、そういう産業も維持されなくてはならない。
どうなっていくのか、こんな絵巻物を見ていて、
ふと、想いが現代にフィードバックしてきます。
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