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ドイツ住宅の実情と北海道

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きのう、「ドイツの住宅政策に学ぶ」と題した国際セミナーが
札幌市内で開かれました。
札幌市は、いまの市長さんがドイツパッシブハウス基準に傾倒されて
「札幌版次世代住宅」基準を公表されるなどの動きをみせていて
そういった流れから、札幌市がイニシアティブをとって
こうしたセミナーを開催されたようです。チラシは以下の通り。

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なぜか、参加申込みはファックスだけと言うことで
申し込んだか、どうしたか、記憶が定かではなかったのですが
問題なく「報道席」にて取材させていただきました。
残念ながら、北海道知事選挙の公示日とかで
取材席には結局、最後までわたしひとりという結果でした。
ドイツ側からは、国土交通省の専門官の方、公的住宅供給管理者の方、
民間のエネルギーマネージメントの方の3氏が参加されていました。
ドイツパッシブハウスについての情報発信が活発なわけですが、
実態としてのドイツの住宅事情を知る、いい機会になったと思います。
2020年の省エネ基準義務化に向けて、日本全体としては、
住宅事業者の間で、住宅性能向上についての技術情報に敏感なようです。
しかし、北海道はそういった動きにはほとんど鈍感で
それこそ、ドイツパッシブハウス基準について、
全国でむしろ一番興味が薄い地域であるかも知れません。
というか、日本の義務化基準などとっくに達成しているので縁遠い話。
日本側基調講演をされた北海道科学大学の福島教授のお話でも
北海道は、日本全国とは違う地域基準を「寒地住宅法」の制定以来、
独自に創出して、地域認証としての「北方型住宅」にまで至る
日本の建築工法に最適化された性能向上を追求してきた経緯がある。
その結果、日本国の住宅法制を常にリードしてきたし、
そういうなかでもQ値1.6という、制定当時の世界基準で比較しても
かなり先進的な独自の地域基準を国に認めさせてきた。
さらに日本の木造工法では、
気密化というものが不可欠な技術指標であることを解明し、
その高度化技術を地域を挙げて取り組んできた。
続いて発表されていた山本亜耕設計事務所・山本氏も
単なる数値基準のレベル問題ではない、
地域の建築技術・ユーザーの認識・研究者たちの努力など、
いわば地域総体としての取り組みこそが、
現在の北海道の住宅性能レベルの原動力であると指摘されていました。
基準数値が変更になれば、それに対応することはすぐにでも可能な
地域全体としての技術資産は北海道にはあるけれど、しかし、
それにかかるコストと費用対効果を考えてみると、
本当にその基準自体がユーザーのシアワセに似合っているのかと、
そういったスタンスを明示していたと思います。
ドイツ側のみなさんからの発表では、
エネルギー消費自体は国レベルでも、はかばかしくは低減していないこと、
国を挙げてパッシブハウス基準を導入しているけれど、
既存住宅では全体の1%程度しか基準を満たせていないことなど
かなり率直な発表もされていました。
確かに木造が基本である日本に対して、レンガ造が基本であるドイツでは
既存住宅の断熱改修では、困難は想像にあまりあります。
そういった意味では日本の木造工法は基本的に柔軟に対応可能。
そのあたりも、きわめて率直に意見交換できました。
ただ、どうしても言葉の壁があり、
さらに時間の制約も多すぎて、突っ込んだ意見交換には至りませんでした。
総体としての住宅性能の向上には、制度基準がどうこうというよりも、
そうした技術の向上、イノベーションを作り出す
基盤としての社会的条件づくりの方が
実はもっとも大事な要件ではないのか、という印象を持ちました。

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