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人間の手業〜てわざ〜

写真は、先日見に行った旭川博物館の展示から。
北東アジア民族の靴です。
たぶん、マンモスハンターの末裔であるかれらは
海洋生物の狩猟に優れた能力を見せていた民族のようなのですが、
アザラシとかの獣皮を加工してこのような見事な手業製品を造形していた。
一品生産に違いないかれらの加工品がここまで精巧で
デザイン的にもまことに優れていることに驚く。
本体は毛皮で造作され、
微調整するためのひもは、樹皮をなめしたようなものを使っている。
民族の中の女性たちがこうした加工を担当したことは疑いない。
そういえば、アイヌの女性たちは結婚に際して
その衣類の一切を自分で造作して持参するのだと聞いた。
男性はチセと呼ばれる家を造作するのだという。
まぁ、こちらはコタンの総出で手伝うことになっているそうだけれど。
そういう意味では、女性たちの造作の才能は素晴らしい。
こうしたものを造形していく繊細な感受性、
その美しさへの思いの深さに、まことに打たれてしまう思いがする。
きっと、こうした造形を造った人は、美しいこころの旋律を奏でていたに相違ない、
と、そういう想念に駆られてしまう。
はるかに昔のそういう感性に、強く惹かれていく。
男性が女性に思いを抱いた、その深い部分にこういう感受性への
憧れがあったことを、強く思い起こさせられる。
このような男女の深みのある交感は、
現代生活において、むしろ大きく鈍磨してしまっていると思う。

こうした見事な造形物を見ると、
そこに込められた人間ひとりひとりの個性の息吹が感じられて、
凛とした美しさに深く癒される。
わたしたちは、ものを豊かに消費しているけれど
本当に豊かになったのだろうか?

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