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アイヌ以前・北海道島の歴史

アイヌ社会というのは、文字を持たない社会だったので
文献の記録が見あたらず、その「歴史」という視点は
持ちようがなかったと思います。
そのアイヌに先行する社会である「檫文」社会に
興味を持っているわたしにしてみると、
大きな壁であって、なかなか想像力を巡らせない世界。
そう思っていたのですが、
最近、住宅歴史的な必要があって考古的な世界に入っていって
多くの知見と接することが出来るようになってきました。
これもインターネットによる情報世界の拡大が大きいと思います。
これまでは、大マスコミによる大きな情報仕分けが行われていて
人間の興味分野というのが管理されていた、
とまでいえないまでも、ニッチな分野についての情報発信が難しかった。
それが、Google などの検索を駆使することで
興味分野の絞り込みと、特定が非常にやりやすくなってきた。

まぁ、枝道になってしまいましたが、
写真のような本と巡り会うことが出来まして、
この著者の方、瀬川拓朗さんという方は、旭川市博物館学芸員の方で、
考古学が専門の方です。
考古学というと、遺跡とか非文献記録の世界であって
「歴史」というひとの社会のありようまでは想像力が至ることが少ない世界。
そういう固定観念にとらわれていましたが、
この本と巡り会って、目を見開かされるような思いを抱きました。
縄文の社会から、檫文、オホーツク文化、さらにアイヌと
変遷してきた北海道島の人文歴史寸前までの迫力がある。
個人名が記載されていないだけで、
もうすこしで具体的な個人の動向がかいま見えそうなところまで、
肉薄していると思う。
モヨロ貝塚から発掘された人骨の状況から
具体的な「殺人経緯」を活写するあたり、
その想像力の展開は素晴らしい。

で、これまで自然との共生、という
美辞麗句に飾られていたアイヌ社会の発展プロセスを
具体的な発掘資料などへの分析から、
その真実の姿に迫っていると感じました。
サケ漁への執着が、和人社会との交易のための経済活動であったことが
その前時代との比較で明瞭に示されています。
アイヌ社会は自然利用システムであることは変わらなく、
自然破壊型ではないけれど、
さりとて単純に美しくローカルなユートピア社会と夢想する愚を教えてくれる。
久しぶりに興奮を覚えながら、
知の世界に浸りきっておりました。

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