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明治の国家デザインからの脱却

さて、きのう書いたことの続きです。
地方政府レベルで、北海道という自治体のなかでの
30年後論議が行われたわけですが、
傍聴していて、感じ続けていたのが、
日本の基本的人口、社会問題の視点の欠落です。
まぁ、言ってみれば基本哲学の不在、という問題です。

人口減少予測というのは、ずっと行われてきているのですが、
それは、これまでのような社会体制を前提としてのことであり、
それが永続的に続いていくのなら、という前提条件なんですね。
で、この「前提条件」について、非常に疑義を感じている。
日本の経済は、近代国家としてスタートを切った明治から
富国強兵、戦後で言えば経済大国という明確な目標を持って、
そのために官僚制度が、合目的的に仕組みを作ってきた。
で、その場合の「前提条件」は、
「民族国家」概念だったと思うのです。
それまでの、鎌倉時代以来〜徳川政権に至る、
封建的武権による国家体制が転覆された段階で、
欧米と肩を並べるような国家を想定したときに、
徳川政権を倒す、ひとつの有力手段として天皇制の徹底活用があった。
この時代の世界の基本的趨勢であった、「民族国家」を日本で構想するときに
天皇制という存在が、効果的と考えられた側面が大きい。
それまでの、直接的権力を持たない形式的存在であった天皇制を
そのように生な、統治手段に持ってきたのは、薩長政権の基本戦略だった。
明治の段階で、天皇制は大きく変化したことが歴史的な事実。
そして、その段階で生まれた近代国家(を志向する)官僚機構にとって、
この天皇制はきわめて有用だった。

で、今日、この「民族国家」概念というのが、
世界的に大きく揺らいできて、
とくに、経済のグローバル的な進展の結果、
企業には基本的に国家意識というようなものは存在する必要はなく、
市場と経済原則にのみ忠実に従えば、
もっとも安く生産できる場所で生産し、もっとも大きな市場に対して
商品を投入していくことのみが、追求されることになる。
コストの高い場所で生産を維持する必要は企業の基本原則からすれば
まったく意味を持たないことになった時代に、
「民族国家」単位で、国家経済をどうするという議論をしても
そもそもからして、意味がないと思える。
逆に言えば、こういう時代に国家というのはどうあるべきなのか、
もっと論議が起こらなければならない。
今の世界では、アメリカと中国という
一方は歴史的な移民国家と、他民族国連型国家という存在が
大きくなってきているのが基本的な趨勢。
伝統的な民族国家集合・ヨーロッパも、
EUという共同体・国連型に移行しようとしている。
中国というのは、基本的に多民族国家であって、
ほぼEUと似たような国家であり、その先達とも言える。
中華、というひとつの世界観の中で多様な民族が覇権を争い続けてきたのが
中国という世界だということができます。
近代の歴史で見れば、清朝を滅ぼし最後に中華世界を支配しようとしたのが、
日本民族だったのかも知れない。

で、こういう政治と経済の世界的な変化の時代に
急速な近代化の結果として、人口の急増と急収縮という
問題を抱えることになったのが、日本の現状。
これを、民族国家という考え方だけで乗り切っていこうというのは
どう考えても時代認識が間違っているとしか思えない。
そもそも、弥生から中世に至る時代には
日本はむしろ、積極的に移民を受け入れ続けた国だった。
百済王敬福という百済の王族系統は、
600年代の東アジア国家争乱の結果、日本に亡命・移民した民族の末裔であり、
当時の王朝から、関東への移住定着を命じられたというような歴史もある。
かれらは優秀な金採掘集団を抱えていたようで、
東北地方での金発見・採掘に尽力したことで
のちに「陸奥守」に就任している。
日本の黎明期には、そういった事例はそれこそ無数であり、
大陸の進んだ制度・文化をもった渡来人は
日本の国家建設において基本設計に携わったのが現実だったのだと思う。
そもそも日本、という国号自体、また、中国皇帝に対する天皇という表現自体、
深く中華世界との関係性、その発想の基盤において
「渡来人」たちの知的レベルに大きく依存していたに違いないと思われます。
日本というのは、中華世界から見て
「日の出ずる方角にある」ことから命名されたことが明らかですね。

こうした出自から考えて
そもそも日本は、移民型の国であったというように言えると思います。
これからの国家運営を考えるときに、
こういった視点が、どうしても不可欠なのではないか、
いつまでも明治の時の、世界に追いつくための民族国家概念に縛られていては
これから、行く末を間違えるのではないか、
そういった思いを感じ続けているところです。

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