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【北海道工務店の「粒ぞろい」パワーの秘密】

写真は一昨日の北海道地域工務店グループ・アース21の住宅見学会。
今回は道東・十勝地域での開催で住宅見学が5件あった。
ツーバイフォーあり在来工法もあり、バラエティに富んでいる。
こういった住宅見学会が年間5−6回各地域で開催される。
で、工務店会員30社以上の住宅を相互に見学し合い、
その現場でいろいろな情報交流が活発に行われる。
このような「情報交流」機会はそれこそ高断熱高気密住宅「運動」が
本格的に取り組まれはじめた40年以上前から
いろいろな住宅団体を問わず、活発に行われ続けてきている。
実物を見れば、その「学習効果」は計り知れない。
はじめのうちは恐る恐る「こんなこと聞いたら恥ずかしいかなぁ」という
素朴な疑問をも持っても、なかなか言い出せない人も多い。
しかし、たとえばその場では質問などができなくても、
あとで、お酒が入ってくると「よーし、いっちょ聞いてみるかな」という
勇気が湧いてきて「あの、、、、」と声を掛けることもできる。
そういうときに、見学住宅を提供した側も、
エラそうな態度は特段取らない。
なぜか。
それは自分自身もそういうプロセスを経て先輩たちから聞いてきたから。
恥ずかしさを顧みず思い切って聞いてみたら、
おっかなそうな顔をしていたひとの相好が一気に崩れて(笑)
「おお、なんでも聞いて」という表情に変わって話しやすくなる。
現場で大工さんたちとの技術的な「指導」の仕方などの細部に至るまで
その具体的な「ノウハウ」まで含めてなんでも情報が行き交っていく。
地域としての北海道には、こういう「情報基盤」が確実に存在する。
特定の「大家・大先生」ではなく、各地の気候風土に踏まえて
現場的に研究開発の姿勢を保ち続けて努力する作り手の
分厚い層が存在するといえる。そしていまドンドン世代交代も加速している。
そういった存在同士がこのように活発に相互交流を繰り返している。
特定の部材メーカーの建材についても、一方向だけではなく
それこそ実地に検証した結果やプロセスなどの情報が活発に交換される。
だから自分自身も使ってみて、その体験を他に共有化することに
ためらいというものが乏しい。
・・・というようなことは、しかし特定の大きな有力企業を生むこととは
反対のバイアスがかかる趨勢を生むだろうと思います。
企業活動として考えれば、知的財産としてこういう「経験知」を
保護することがそのまま「企業利益」につながる。
関東以南地域では、こうした北海道での「技術資産」をその活動地域で「独占」し、
企業としての成功を収めるというケースが多く見られた。
北海道で習得した技術を自社の独占物として活用したのですね。
資本主義の基本的な思想にしたがった当然のことではあると思います。
しかし、北海道ではそのような情報利益独占はできない。
すでに半世紀以上、こうした知的技術情報資産はなかば「公有」されてきている。
だから、本州以南地域では「有力ビルダー」というのが各地で
発生し、そしてビジネス的大成功を収めるけれど、
北海道では「粒ぞろい」というような企業規模群にとどまらざるを得ない。
北海道ではすでに半世紀以上こういった状況なので、
いまさら「大先生化・大成功者出現」とは市場は向かわないと想像できる。

しかし、ユーザー側から考えるとこのことは
均質で多様性に満ちた選択が可能になる、というメリットになる。
「ここで無なければ絶対ダメ」というような非選択的な市場ではないのですね。
将来的にこういう市場の光景がどうなっていくか、興味深い。

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