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【きた住まいる南幌-4 自然志向+高断熱=北海道らしさ】




今回の有力地域工務店+建築家というペアリングのなかで、
いちばんピッタリとハマっていたのが、この武部建設+櫻井百子の組み合わせ。
武部さんは「簡素・無意匠」といった志向性の強いビルダーさん。
まぁ無意匠というのは比喩で、ゴテゴテしたり押しつけっぽいデザインではない、
というような意味合いの家づくりの特徴を感じます。
今回の住宅でも「芯材」とでもいえる柱には古材を使っていますが、
こういう古材へのこだわりのような志向性が一種の「雰囲気・空気感」を醸し出してくれる。
たぶん日本人的なもの、古民家のもつ民族的郷愁に通じる部分。
北海道の高断熱高気密住宅進化の中で、こうした武部さんの感覚は
ある「標準」に近しい傾向を生み出したように思われます。
「和」とか、わびさび、といった「きれい」に異常なこだわりを持つ感覚とは違う、
もっと日本のベーシックな庶民的「民家」生活文化の北海道的継承志向。
武部さんの本拠は空知・三笠と岩見沢市ですが、
この地域は日本各地からの移民のなかでも農業的先進地域からの移住が多かった。
囚人労働が集中投下されて基盤整備された農地であり、
明治政府としての地域農業振興への期待がもっとも高い地域だった。
わたしの母の実家はこの三笠なのですが、
農業先進地であった「美濃」地方からの移民であり、
明治初期から北海道農業開拓の最有力地域という特性を持っていた。
そうした農業熟成地域の日本住宅文化が北海道に根付いたとわたしには感じられる。
いわば、日本ベーシックといった住意識がみえるのです。
設計者の櫻井さんも、こういう大地に根付いた暮らしようへの
志向性を強く感じさせられます。
女性設計者ながら、作られる建物はけっこう武骨で、
なにより普段着の暮らしようへの温かい視線が感じられます。
今回の住宅でも、腕白なこどもの暮らし行動に添ったような動線配置を
説明されて、わたしも思わず共感させられた(笑)。
こういった作る志向性のペアリングの結果、
なんとも地域標準っぽい、北海道版「新・民家」とでもいえるような住宅になった。

間取り的にも、いわゆる玄関という様式的スタイルではなく、
日本古民家の土間空間のような場所から入っていくスタイル。
そこに仕切りとしてブロックの壁があって、室内側に据えられた薪ストーブからの
蓄熱的暖気が冷えたカラダを迎え入れてくれる。
ブロック壁から左右に動線を分けていて、右は薪ストーブと太陽の暖かさを受け入れる
大きな開口をもつリビング空間になる。一方左側は「ただいま」と言って
帰ってきた腕白坊主が、まずトイレに入り手を洗い服を脱ぎ換えて
その先で母さんの作ってくれた食べ物にまっすぐ向かっていくような、
にぎやかなニッポン人スタンダードな屈託のない暮らしがデザインされている。
リビング側大開口からは外のデッキにも回遊でき、
2階のテラスからは夕焼けの眺望が空いっぱいに感じられる外部空間もある。
・・・そんな「この場所らしい暮らし」が意図されている住宅。
いかにも「北海道らしい」というありようを感じた家でした。

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