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尾道のわび住まい

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ことしもあと2週間ほど。
あわただしい年末進行の案件もありますが、
札幌にもようやく根雪と思われる積雪もあって、
年末感がどっと迫って参りました。
わたし自身は、年末年始にかけて創作の進行があって、
年寄りらしく(笑)、どっぷりと仕事にハマりながら過ごしたいと考えています。

わたしは、北海道東北での「高断熱高気密住宅」取材が
メインフィールドになるわけですが、
結局は人間の暮らしのありように強い興味を持っているわけで
一方で、低断熱低気密のわびさびの住まいにも強く惹かれるものがあり、
写真のような住宅を見ると、ついシャッターを向けてしまう。
自然的な温度が年平均で16℃以上ある地域では、
って、要するに関東以南地域、日本の人口の80%以上の居住地域ですが
そこでは、こんなふうな、人間居住環境が高度化した現代常識からすれば
「庵」に近いようなたたずまいの家に、惹かれるのですね。
たしかにこうした地域では、
冬場の気温も夜間でようやく零度近く、
日中はプラスで10℃前後まで上昇する。
であれば、非活動的な、仙人のような暮らし方からすれば、
冬の寒さを、まるで精神修行のように堪え忍んで、やりすごし、
心身を素裸のようにして空気にさらして生きていくような
そういった生き方にも、密かに憧憬の念を持つ。
とくに高齢化社会を迎えて、日本人の心性の中の
こういうわびさびに生きたいと考えるひとには、ある同意もある。
そして逆にこういう日本的心性を高断熱高気密住宅で実現するとすれば、
ではどういうデザインの回答があるのか、と
思惟を巡らしている部分もあります。
たぶん、重厚に断熱された、素材だけの
素器のような空間イメージが湧いてくる。
木造であれば、構造素地がそのまま正直に顕しにされ、
裸の構造要件だけに向かっていくような率直な空間。
その外側で断熱されている、というような建築がそれに該当するのだろうか。
事務所は、ちょうどそんなようなイメージで作った。
断熱材に深く感謝の念を実感できる素器。
どうもそんなような家づくりになるのでしょうか?
高断熱高気密住宅は、そういった多様な人間精神の表現たる
「空間デザイン性」をどのように実現できていくのか、
そんなところに、北国の住まいの今後のカギがあるのかも知れません。

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